あー、落書きされてるう！せっかく、２１世紀を真似してぽすたーなるものを作ってみたのにい！
この字はたて太郎だよ。
ったく、いい年こいて仕方ないねえ。
あら、茶さじ郎ちゃん、いらっしゃい。
また長屋に遊びに来てくれた人を案内してるんだね。
いつもよく働くねえ、ご苦労さま。
おめでた屋の仕事もあるでしょ。
あとは、おなかおばさ…、じゃなくて、
おなかおねえさんが引き受けたよ。
おまえさんが長屋に遊びに来てくれた人だね。
あんな長屋に私みたいのが住んでるのは場違いみたいでしょう。
こういうのを「掃き溜めに鶴」って言うんですよ。
おや、なにコケてんだい？
もう足腰にガタがきてるんじゃないだろうね。
まあ、とにかくおかけなさい。
アッ、あたしはなかって言うんだ。
独りもんでね。
まあ、長屋には他にも独りもんが、たくさんいるけどさ、
私みたいのは行き遅れだの行かず後家だの言われてさ、
でも言い寄る男も多くてさ、
あれ、座っていても、またコケたね。
おまえさん、本当に大丈夫かい？
でも、みんなと同じ生き方しないと肩身が狭い社会は、
２１世紀でも同じだね。
そりゃ、私らの時代と比べたら、ずっと良くなってるけどさ。
２１世紀の制度だって家族が基準で、独り身は冷遇されてるってね。
人生はそれぞれなんだから、
ほんと、すべて標準的な型に、
当てはめないでもらいたいもんだ。
いかに人と同じように生きたかというより、
いかに人としてどう生きたかが大事なんだからさ。
独りもんは、自分のことさえ考えてればいいから気楽だって言われるよ。
でも、それは一人で全部自分の人生を請け負うということでもある。
家族で分け合って背負っていくより、大変なこともあるんだよ。
人間ってさ、他人の人生はいいところばかりを見たがり、
自分の人生は悪いところばかり見たがる。
でも、どんな人生だって、いいところと悪いところはあるんだよ。
私だって、何もかたくなに嫁にいくのを嫌ってるわけでもない、
贅沢言ってるわけでもない。
でも、人生の流れがどういうわけかこうなっている。
そこには、それなりの意味があるんだと思う。
だからそれを、愚痴って不満だらけでいるより、
受け入れて楽しく元気でいるほうが、いいじゃないの。
その立場からしか見えないものってのが、あるんだよ。
そう思うと、頑張る気になれるんだから！ハハハ。
そうそう、２１世紀の結婚相談所っていうのかい、
ああいうところの宣伝みると、
独りでさみしいとか、まわりが結婚していくのに私だけ売れ残ったとか、
そんな暗い愚痴がよく載せてあるねえ。
まあ、そうしなきゃ商売にならないだろうけどさ、
ちょっとありゃ独りもんへの偏見むき出しで、
こけにしてないかい。
せめて、独りで頑張るあなたもすてきだけれど、
二人ですてきな人生修行してみませんか？とか言えないのかい。
えっ、それじゃだめかい。
まっ、言いたいやつには言わせておけばいいことさ。
人生いろいろなのがあたりまえ。
大切なのは自分をしっかりもって、自分の人生、自分らしく一生懸命生きること。
私だって自慢じゃないが、人から後ろ指さされることはしてないからね。
えっ、一人でよくしゃべるって？
そうなのよ。
この調子だから、男がみんな逃げちまうのかね。ハハハ。
でもね、人生は限りもあるしやり直しもできないし、だったら楽しく生きなきゃ損じゃあないか。
そうだ、おまえさんたちの時代っぽく、たとえて言うならこんな単純話さ。
プラス思考の点灯虫プー子さんと
マイナス思考の転倒虫マー子さんのおはなし
プー子さんとマー子さんはなぜか縁遠く、いつまでも独身だ。
結婚より仕事が楽しいからというわけでもない。
むしろストレスが多くて、仕事も行き詰まった感じだが、
生活の手段として働いているだけのことである。
まったく同じ境遇ではあるが、
プー子さんは結婚できないことは「神様が自由に生きていいよってくれた人生」と思っている。
仕事のうさ晴らしは、独身だからこそできる自由を生かして
旅行や趣味で解消している｡
気さくで後輩達の面倒も良くみるし、後輩の結婚や出産も、自分の事のように喜んでくれる。
そんなプー子さんの悩みといえば、目じりの笑いジワが深くなっていくことだ。
一方、マー子さんは、結婚もできず、
やりがいのある仕事にも出会えない自分の人生を憂いている。
男性社員にチヤホヤされている後輩や、結婚の決まった後輩には妬みをつのらせ、嫌がらせをして憂さ晴らしするのが楽しみ。
すっかりお局様として煙たがられている存在。
マー子さんの眉間の縦ジワは今日も刻まれていく。
ある日、二人に小さな腫瘍が発見された。
医者はそれぞれ二人を呼んで、同じ事を言った。
「幸い、危険性は非常に少ないものです。
今のところは、手術も投薬も必要ないですが、定期的な検診で一応見張っていきましょうね」
マー子さんは、医者の言葉にくらーくなって落ち込んだ。
「何にもしないなんて、手遅れなのに違いない。
どうして、私ばかりこんなついていない人生なの！」
プー子さんは、医者の言葉を聞きながらこう思っていた。
「知らないまま過ごして手遅れになってたかもしれなかったことを思えば、これからは定期的に見張っていてもらえるんだもの、わかって良かった。
今まで生活の事ばかり考えて踏み切れなかったけれど、
我慢して好きでもない仕事していたストレスがあったんだな、きっと。
これは、思い切って新しい生き方に向かえということなのかも！」
そう考えたらなんだか嬉しくなってきて、お医者さんの顔を見ながら
ニコニコしてしまった。
医者はまた二人に同じ事を言った。
「大丈夫？気を確かに持ってね」
マー子さんは人生を呪い、ますます暗くひねくれて孤立していく。
そして格好のリストラの対象になり、職まで失った。
でも、喜ぶ人はいても同情する人はいない。
プー子さんがやめると言うと、皆がひきとめた。
それでもプー子さん、リストラの嵐が吹き荒れる中、晴れて自発的プーになる。
数十年後、不満ばかりのマー子婆さんは腫瘍を悪化させ、
つまらない人生だった思いながら眉間の縦ジワを深く刻んで世を去った。
一方、本当に自分のやりたいことを追求し手に入れたプー子婆さん、
腫瘍は悪化するどころか消えてしまい、医者を驚かせた。
婆さんとなっても、ますます元気だ。
十分に人生を堪能し、ある日、自分らしい人生が築けたと満足げな笑みを浮かべ、目じりにカラスの足跡を刻んで穏やかに天国へと旅立った。
同じ運命でも、心一つで全然違うものになります。
あなたの心には、この二人がいつもいます。
そう、点灯虫プー子さんも転倒虫マー子さんも同じ人物なのです。
だから、点灯虫プー子さんになるか、転倒虫マー子さんになるかは、まったくあなたの自由。
だって、あなたの人生を作るのは、あなたなのですから。
基本はこれ。
自分の置かれた境遇を、まず受け入れ認めることから始まる。
そこから、本当に満足できる人生目指して模索していくんだよ。
そうしたら、自分はなんでこの境遇なのかって意味がわかってくる。
不満は成功への種なんだ。抱えて愚痴ってるだけじゃ、種は育たない。
プー子はそういう境遇だったからこその、充実した幸せな人生の形を作り上げたんだよ。
あれえ、どうしたんだい､ため息なんかついて。
えっ、でもプー子は一生独り身で目じりにカラスの足跡があって
病気持ちであったことには変わりないじゃないかって？
いいかい、独り身だから不幸とは限らないんだよ。
カラスの足跡なんざ、いい生き方の証みたいなもんさ。
病気にしたって、マー子みたいに、悪い方向に行ったら気の毒だけど、
プー子はいい方向へ進むためのきっかけにしちまったんだよ。
そんなふうに、上っ面だけで悲観的に見ちまうクセは、直したほうがいいね。
そもそもプー子を不幸と思うのだって、おまえさんから見た基準で、そう思うだけ。
他人の基準で、その人の幸不幸が決められたらたまらないよ。
本人は不幸でも、人からは幸せと思われる人生のほうがいいということになっちまうじゃあないか。
ともかくも、２１世紀風に言えば、
プラス思考になるのは簡単なこと。マイナス思考を捨てればいいだけ。
ってことさ。
さあ、おまえさんも陽性思考の人間になって、人生何でも楽しみながら生きましょうよ。
すっかり話し込んじまったね。
今日は、わざわざ私らあっぱれ長屋の住人に会いに来てくれてありがとう。
私たちも、時々２１世紀に行って、２１世紀の単純な変人のくるりと、
話をしてくるんだよ。
それを、発行人って人が、
めえるまがじんってのに、してるんだって。
暇な人だよね。
今まで発行されたものは、ここでも紹介しているから、
｢あっぱれ長屋のプラス話」の一覧から見て、読んでくれると嬉しいよ。
のほ本屋で登録できるから、もし良かったら読んでちょうだい。
ひと月に、１、２回しか出ないんだけど、そのくらいだと、
読むのに負担にならないから、ちょうどいいでしょ。
物事はいいほうにとらなきゃね。
え、何か言いたいことでも？
まあ、とにかく今日は、本当にありがとう。
星の数ほどある中から、
こんなところにまで来てくれたなんて、
奇跡的な確率をくぐりぬけてきたねえ。
ほら、おまえさんにはそういう力があるんだよ。
これも何かの縁、私らも、おまえさんを応援しているからね。
大丈夫、おまえさんは、絶対に幸せになれるから！
自信をもってお行きなさい！
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