あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
迷ったり悩んでいる時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第23号
〜 恋愛に夫婦に人生にお線香の火は欠かせない〜
2004. 5.14
くるり
みなさん、こんにちは。
今日は大家のぼた衛門さんです。
ご隠居さん、１９号の「自殺が頭をよぎるとき」は、まあ評判よかったよ。
ぼた衛門
そうかそうか。
くるり
これで、助平じいさんから、完全に脱却したね。
ぼた衛門
それでは、今回は線香の話にするかな。
くるり
自殺の次に線香の話かいな。
ぼた衛門
だが、抹香くさい話ではない。
線香は恋愛夫婦道ということなんじゃ。
くるり
唐突な取り合わせできましたねー。
お線香と恋愛とどう結びつくの？
ぼた衛門
わしは、わしとおふくのご先祖に毎朝、お線香を２本たてるんだ。
もちろんわしとおふくみたいに、仲良くくっつけてね。
くるり
のろけはいいです。
そういえば、ご隠居さんも私らから見たらご先祖世代だから、
お線香を供えないといけないね。
ぼた衛門
わしゃ、まだ江戸時代で生きとるわい。
くるりだって、２２世紀から見たら、ご先祖世代だけど、
まだ生きとるだろが。
くるり
なんか、わかったようなわからないような論理だ。
ぼた衛門
２本の線香に火をつけるとな、火はぽっと燃え上がる。
これが、二人が出会って恋に落ちた状態。
この炎が大きいほど、激しい恋。
くるり
二人の恋が燃え上がった状態かあ。
あー、私もそんな恋がしたい。
ぼた衛門
何を遠くをみつめた目をしてるんじゃ。
燃え上がる炎で、互いの姿がしっかり見えぬ。
これが、欠点も目に入らない状態。
くるり
なるほど、すべて恋の炎の中。
ぼた衛門
で、線香立てに並べる。
これが、夫婦におさまった状態。
やがて、炎も落ち着いて、お線香が幸せの香りをくゆらせていく。
くるり
細く長く愛情の灯をともしていくんだね。
ぼた衛門
ところが、ここからがおもしろい。
２本の線香を香炉に立てるとな、毎日様子が違うんだ。
頭の先をよせあって寄り添うように立ったり、
全然違う方向を向いてたり、離れるように傾いてしまったり。
くるり
へー、まさしく夫婦模様だね。
ぼた衛門
今日のお線香夫婦は仲がいいなとか、
それぞれが勝手にやってるようでも根元は一緒だとか、
全然気が合ってないとかな。
で、離れてしまった日は、わしが直してあげるんだけど、
すぐに直る日もあるし、なかなかうまくいかない日もある。
くるり
なんか、それも夫婦模様みたいだね。
ぼた衛門
そう、もう一つ人間と同じなのは、離れてしまったら、
きちんと立て直すことが必要になってくるってこった。
傾いたまんまじゃ、危なくて仕方あるまい。
くるり、これは夫婦と線香の基本だぞ。
くるり
線香はともかく、私に夫婦の心構えとく前に、その相手をみつける方法を
教えてください。
ぼた衛門
これから先の話は、夫婦でなくても、すべての人間関係で言えることだから、
くるりはそのつもりで聞くんだな。
くるり
話をそらされた。
ぼた衛門
人間線香の場合は、誰にも直してもらえねえから、
立て直すには、自力で動くしかない。
くるり
でも、お線香が自分から寄り添うように向きを変えることは、
ありえないよ。
ぼた衛門
だから、自力で動くしかねえ人間線香には特権があってな、
火がついてたら自分で動ける線香なんだ。
くるり
それって、強引すぎる展開だと思うけど。
ぼた衛門
そんなことはないぞ。
まず、自分の火を探す。
すると、自分の状態がわかるから、向かうべき方向が見えてくる。
それに従っていくと、まっすぐに立ち直る。
くるり
なんか、わかったようなわからないような論理なんですけど。
ぼた衛門
ところが、ここで人間線香は、間違いをしやすい。
たいていは相手の火を見て動こうとするから、
いくら動こうとしても、なかなか立ち直れないんだな。
くるり
ますます、わからないんですけど。
ぼた衛門
ここでいう人間線香の火はな、「非」という火だよ。
つまり、自分の非を確認することからことは始まる。
なのに、たいていは相手の非ばかりを見て、事を解決させようとするんだ。
だから動けるわけねえし、傾いたまま直らないのはあたりまえ。
くるり
たとえば、夫婦なら浮気をしたことを責める前に、
浮気をさせるような気分にさせてしまった原因を探してみる、
みたいな感じかな。
でも、仮に自分の非を見て、自分が立ち直っても、
相手も同じようにしてくれないと、
両方がまっすぐ寄り添えないでしょ。
ぼた衛門
そりゃ、相手も動いてきてくれるかは、相手しだいだ。
でも、片方がそうやって動くと、相手も自分の非が見えやすくなるんだ。
それでもわからねえような相手なら、大したことはねえ奴だ。
とっとと別れな。
くるり
おーい、別れさせてどうする。
でも、どう考えても自分の非がないという場合もあるよ。
ぼた衛門
案外少ねえもんだが、そういう場合がないとは言えんな。
そうしたら、愛の火があるかを探すんだ。
別れる決心がつかねえなら、まだ愛の火はあるはず。
それがあれば、まだまだ動きようがあるだろう。
くるり
お線香は夫婦道であり、恋愛道でありか。
よくわかったけど、今のところの私には、
対人関係に応用させてもらうくらいしか使えないなあ。
でも、いつかはきっと役に立つよね！
ぼた衛門
さあな。でも、心配するな。
１本のお線香でも、充分いけるぞ。
その場合は、人生模様だ。
いい香りでまわりに幸せを与えながら、最後まで燃え尽きるお線香と、
火が消えて、しけて傾いたまま、どんどん使い物にならなくなっていく
お線香と、どちらがいいか？
なっ、くるり、そういう見方ができる。
くるり
それって希望をくれてるんだか、取り去ってるんだか…。
まっ、いいけど。
私も毎日、お線香をお供えしようかな。
ご先祖の供養にもなるし、癒しにもなるし、におい消しにもなるし、
一石三鳥。
ぼた衛門
くるりは、におい消しが必要なほど、臭いところにいるのか？
とにかく、お線香をあげることで、見えてくることはいろいろある。
人によっては、もっといろんなことが見えてくるかもしれねえ。
それでわしも、一つ気になることが見えてきてな。
くるり
それはなあに？
ぼた衛門
ばあさんが立てるときは、なぜか最初から２本を
いつもうーんと離して立てるんだな。
なんでだろ？
（発行マガジンより、若干手直しして本文のみ掲載しております。）
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