あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
やる気を流し込みたい時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第２号
〜努力ってやつは〜
2003.8.17
くるり
はーい、みなさん、こんにちは。
今日は、大工のたて太郎さんです。
たて太郎
どっ、どうも…こういうのおいら緊張しちゃうよ。
くるり
それに、特に私のような美人の前では緊張するしね。
たて太郎
ありがてえ、その言葉で一気に冷めて、落ち着いた。
くるり
それはどういう意味だ。
ところで昨日、普請場で足すべらせて
落っこちたんだってね。
大丈夫？
たて太郎
平気、平気！慣れてるからね。
落っこちるのが恐くて、大工ができるかい！
くるり
そんなにしょっちゅう、落っこちてるのか。
たて太郎
おいらは今日は「努力」ということについて話すぞ。
おいらがいかにまじめで知的な好青年かということを、
わかってくれたまえ。
くるり
なに、気取ってんの。
しかし、お堅くきたねえ。
たて太郎
２１世紀の若いやつの中には、嫌いな言葉が「努力」だなんて言ってる奴が
いるみたいじゃねえか。
だけどよー、それは努力を苦痛なもの、めんどくせーものと思ってるからだろ。
努力は嫌だと思いながらやるもんじゃねえ。
くるり
けっこう、まともなこと言ってる。
打ってるのは頭か？
たて太郎
そもそも人間ってのは努力の積み重ねで出来ているんだ。
くるりだって、この世に生まれてから、
言葉にしたって、動作にしたって、
まずは見様見真似で覚えてきたはず。
そうした学習する努力の結果、
ここに見かけはともかく一応人間としている。
くるり
見かけもしっかり人間です!
たて太郎
だけど、私はこんなに努力してきましたなんて思わないだろ。
もし、努力ができなかったら、
ヒトとして生まれただけで、人間として生きていくことができねえ。
つまり努力のできねえ人間はいねえってことよ。
だからこそ、努力をたくさんする人ほど、
人間として充実していくじゃねえか。
くるり
しかも、打ち所が良かった？
たて太郎
おいらを見損なうねえ。「脳あるバカは爪を隠す」ってやつよ。
くるり
そうでもないか。
でも言葉覚えたり、歩けるようになったりって、
自然ににできちゃうものでしょ。
たて太郎
だから、誰だって自然に努力できる力を持ってるんだよ。
くるり
でも、自然体でできることで、
努力したって言うのもねえ。
自分の心の弱さと戦いながら、
時には歯をくいしばって頑張るからこそ、
努力しましたあって言える気がするけど。
たて太郎
おいらの言いたいのは、つらいとか仕方なく、と思ってやってるのは
努力じゃねえってことさ。
そんなのは身につかないし、時間の無駄。
何か目的があるから、または必要だと思うから、努力が始まるんだろ。
たとえ挫けそうになっても、目標を目指す気持の方が強いから、
人は努力を続けることができる。
もうやめたい、でも続けよう、そう思えるのが努力。
もうやめたい、でも仕方ない、そう思うなら惰性。
くるり
たとえつらいと思っても、
「でもやっぱりガンバロ！」
って気持があれば、努力が続けられるもんね。
たて太郎
自分にはできないって思ってる人は、
できないんじゃなくて、ただ努力する目的がみつからないだけのこと。
努力自体は人間である以上、
どんな奴でもできちゃうもんなんだい！
くるり
その目的を見つけるのがむずかしい。
たて太郎
ということで、
何も目的がないから何の努力もしない、とか、
そもそもその目的探すのがめんどくせーし、って言うんじゃ、
動物として生まれたのと一緒だ！
君はそれでいいのか！
くるり
できの悪い青春ドラマ見ているようだ。
でも、今は、
探しても、
その目的を見出せないって人のほうが多いんだよ｡
たて太郎
目的を探しているという点で、
もう努力をしてるじゃねえか。
そんな大げさに考えなくてもいいんだよ。
小さなことでも、はじめてみりゃいいんだ。
それに、努力目標は小さく段階的にした方が続くしな。
または、なんか好きなものがあるはずだ。
あれこれ考えずに、興味をもったことをとにかくやってみなよ。
本気で頑張れる目的は、探すというより、
そうやって常に意識しているうちに、
自然と見えてくるもんなんだ。
無理矢理に目的をひっぱってきて、
自分は努力ができない人間って決めつけちゃってないかい。
くるり
本気になれない目的を目指すことも、
努力ができない原因になってるってことは、確かにあるかも。
たて太郎
もっとも、たとえものにならなくても、
やったことは、必ずどっかでなんかの形で役にたってくるのが、
人生の不思議なところ。
「努力するのは人間。努力しないのは人減ーたて太郎」
くるり
なんかもっとましな言い方ない？
だけど、「果報は寝て待て」とか「棚からぼた餅」とか
あんまり頑張って努力せず、
自然の流れにまかせましょうということわざもあるじゃない。
たて太郎
ちっ、ちっ、これだから、２１世紀人ってのは困るよ。
これは、努力した後のことわざ。
やることやり尽くして、はじめて成立するんだ。
「人事を尽くして天命を待つ」ってところだ。
ぼた餅だってよ、作って棚に置いとかなきゃ、棚から落ちないんだぜ。
棚ぼた衛門って名前のあのご隠居が言うんだから、間違いねえだろ。
だから、「ぼた餅は棚から落ちて来ず」って言って、
努力しない者には幸運は来ないってのも、ちゃんとあるんだ。
こっちは忘れられてしまったようだけど。
くるり
たて太郎さんって、ただのおっちょこちょいだと思ってたけど、
見かけよりはできてる人みたいだね。
たて太郎
あったりめえよ！
ようは茶碗おいて座ってたって
ご飯の方から口の中に勝手に飛び込んではこねえ。
ご飯を炊いて、食卓用意して、茶碗を持って、箸動かして、
口開けて、噛んで、飲み込んで初めておまんまが食べられるんだぜ。
ここで、箸動かすまでの過程を省略することもできるけどな、
生米を手づかみで、かじることになっちまう。
つまり、努力が少ないから、人間らしいおまんまでなくなってしまう。
くるり
うーん、これは実にたて太郎らしい解釈だ。
たて太郎
おめえにとっても食う話にしたほうが、わかりやすいだろ。
２１世紀に生息する汚ギャルとか、部屋を片付けられない人ってのは、
こういう基本的な努力すらできなくなっちまうから、
人間らしい生活からかけはなれてしまうんだと思うよ、おいらは。
くるり
でも、体や部屋の清潔を保つことを怠るということはともかく、
食べるというのは努力というより本能的にできるものでしょ。
たて太郎
食べるのは本能だが、そのためには、
必ず食べ物を手にいれる努力がいるんだぜ。
くるり
なるほど。
たて太郎さんの場合も、
日本一の大工になるという目的があるから、
腕はいいが気難しい棟梁の下での修業もがんばれるわけなんだね。
他にも努力してることがありますか？
たて太郎
あたぼうよ、毎日努力の積み重ね。
ふんどしの洗濯回数をいかに減らすかとか、
朝少しでも遅くまで寝てるためにはどうしたらいいか、
それから、女の子にもてるための努力、
居酒屋のつけをひき伸ばすための努力、
えーっとそれからな…
くるり
聞かなきゃ良かった。
（発行マガジンより、若干手直しして本文のみ掲載しております。）
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