あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
やる気を流し込みたい時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第67号
〜損の後には得がある〜
2006. 6. 11
くるり
みなさん、こんにちは。
今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客様は、
おめでた屋のご隠居で大家でもあるぼた衛門さんです。
ぼた衛門
こんにちは。
あれ、何をふてくされている。
くるり
２１世紀では今、株式市場が大荒れでさ、
私がこれぞと思った株も、
ここのところ毎日値を下げてるんだ。
ぼた衛門
なんの権利の株のことじゃ。
武士の株か、商い権利か？
くるり
あ、そうか。
江戸時代には株式会社の株売買は、
まだないね。
たとえばおめでた屋が株式会社だとしたら、
株券を発行してそれを買ってもらって、
商売をするための資金を集める。
そして、その資金を使って商売をした儲けから、
株券を持ってる株主に配当を払うの。
その株券が、時価で売買されているんだよ。
ぼた衛門
ほう、そうするとおめでた屋は大きな商売ができるようになり、
株主も配当をもらえるというわけだ。
でも、そうなると商売の方法やらなんやら、
株主の口出しも出てくるだろうな。
くるり
さすが、元商人、
得する部分と損する部分をすぐ考えるね。
ぼた衛門
別に商人でなくとも、
損得両方を見るのはあたりまえだ。
くるり
私は、得することしか見ないもん。
損することを見てしまったら、
何もできないからね。
ぼた衛門
確かにそうだが、
得というのは、損の向こう側にあるものじゃ。
前の損だけ見ていても、先の得には手が届かないが、
先の得だけ見ていても、前の損につまづいてあわてるんじゃ。
くるり
「損して得とれ」って、
小さい損をして大きく得をとれということだけど、
損を先にしてから得をしろって意味も含んでいるのかなあ。
ぼた衛門
そんなこたあ、わしが作ったんではないから知らぬ。
くるり
だれも、ご隠居が作ったとは言ってないって。
ぼた衛門
なら、聞くな。
くるり
すみません。
って、なんで私が謝るの。
ぼた衛門
損した気分か？
だが、わしは「くるりは、意外に素直だな」と思ったぞ。
ほら、得してるじゃないか。
くるり
「意外に」というところがひっかかるんですけど。
ぼた衛門
それだけ、おまえが得した度合いが大きいということだ。
くるり
それ、慰めになってるようでなってないんですけど。
ぼた衛門
あたりまえじゃ。
別に慰めるつもりはないからな。
そこで、笑うな。
くるり
怒ってるんだよ！
ぼた衛門
怒った顔が笑顔に見えるとは、これまた得だね。
くるり
相も変わらず、煮ても焼いてもくえないじっさまだこと。
ぼた衛門
おまえは株が下がったって、
ふてくされてるけど、
そうなることもありうることは、わかってたはずだ。
もしそれに備えて、下がったときに買う資金を準備してたなら、
安く株が買えることになる。
売る立場では腹立たしくとも、
買う立場では笑いがとまらんはず。
まさに怒った顔が笑顔と重なるというわけだ。
そして、得する可能性も高くなる。
くるり
それが言いたいがために、
人をからかったのかいな。
ぼた衛門
あ、また笑ったな。
くるり
怒ってるんだってば！
ぼた衛門
でもな、先に損を経験して良かったじゃないか。
くるり
それはそうだね。
先に得して、あとで損するよりは良かった。
ぼた衛門
商売の仕組みも、損が先になるようになっている。
売れるかどうかわからなくても、
先に身銭を切って物を仕入れるじゃろ。
商人だけではない。
職人さんも、先に材料を買い、労力と時間をかけて物を作る。
お百姓さんにいたっては、
売れるかどうかの前に、
人がたちうちできない自然も相手にしなくてはならない。
すべて不確実な得の前に、
自分から損を持ち出すのが先。
もちろん、持ち出した損が回収できないこともある。
でもそれを恐れていたら、
儲けは絶対に出ないことも事実。
損をしてこそ、儲けも出る。
「損せぬ人に儲けなし」
と言うくらいだ。
くるり
「損せぬ人に儲けなし」か。
いい言葉だねえ。
ぼた衛門
わしが作ったんではないぞ。
くるり
もういいって。
確かに、まず損をしてみなければ、
すべてがはじまらないということはあるけど、
問題は、損しても、後に得が必ずあるとは限らないことだよ。
ぼた衛門
ところが実は、損の後には必ず得はあるんじゃ。
ただ、それは必ずしもお金となって来るとは限らないというだけのことでな。
つまり、経験は必ず得ることができる。
くるり
得るだけじゃなくて、得しないとだめなんだよ。
それにお金で損したんだから、
お金で得させてもらわないと困るって。
ぼた衛門
相変わらず頭を使わん奴じゃな。
なんのために、得ると得するが同じ字なんだ。
得た経験を生かせば、
ものすごい得にもつながるということだ。
損することをひとつ知ったということは、
逆に言えば、
得する道をひとつ知ったということになる。
得たものをどう使うかで、
お金で得することにも結びつけることができるんじゃ。
くるり
損した経験のままにしとくからいけないのか。
ぼた衛門
損得というと、ついお金や物で考える。
だから、そういう損得には目ざとい。
でも、現物以外の損得となると、
なかなか気がつかない。
それが、間違いのもとだ。
怖いのは、現物以外の損は、
気がつかないうちに、どんどん大きくなり、
反対に、得の方はどんどん小さくなることが多いんじゃ。
くるり
あらゆる損得を見るということは大事なんだ。
ぼた衛門
人間は、つい自分の都合のいいほうに考えるからな。
くるり
言われてみれば、確かに私も、
上がるほうに賭ける！って感じで見てたな。
それじゃ、博打と一緒だね。
株価が落ちた場合のことも考えておく。
そして、すべてを得た経験として、
痛い思いも得につなげる材料にする。
そう考えれば、下がったこともめでたしめでたし。
株価暴落ばんざ〜い！
ぼた衛門
この単純なところが、
くるりのいいところというか悪いところというか。
くるり
それに、何も今すぐ売るというわけでもないから、
損失も決まったものでもないしね。
ぼた衛門
そりゃそうだ。
急いで売る必要がないものなら、
値が安いときは、売らないという手もある。
その代わり、必ず上がるという保証もないがな。
そこも損の部分として考えておけ。
上手に損を得につなげるんだぞ。
くるり
わかりました！
さすが、売買のこととなると、するどいね。
買ったら、気をつけます。
ぼた衛門
え？
買ったから損したんじゃろ？
くるり
いや、株を買うお金なんてないから、
買ったつもりで、値動き見てるの。
でもねえ、ここのところの相場は、ほんと腹立つんだよ。
ぼた衛門
なんだか、とっても損した気分…。
（発行マガジンより、本文のみ掲載しております。）
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