あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
幸せになりたい時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第２１号
〜心の大掃除 〜
2004. 4.25
くるり
みなさん、こんにちは！
今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客様は、
易者のどう造さんのおかみさん、おはぎさんです。
おはぎ
あー、疲れた。
くるり
おはぎさん、前のときも、第一声がそれだったよ。
今日も、噂を聞きまわってたの？
おはぎ
違うよ。
家の掃除をしてきたから、疲れたんだよ。
くるり
そんな疲れるほどのお屋敷じゃないでしょうが。
おはぎ
あの長屋も、掃除のときだけはお屋敷になるんだよ。
掃除ってのは、手を抜こうと思えばいくらでも抜けるし、
しっかりやろうと思えばとことんできるもんだからね。
くるり
へー、おはぎさんて、意外にきちんとやるんだね。
おはぎ
意外とはなんだい。
ところで、くるりの部屋はどんなだい。
ほこりだらけなんじゃないかい？
くるり
失礼な。
私の部屋は塵ひとつありません。
おはぎ
へー、意外にもきれい好きなんだ。
くるり
意外とは失礼な。
でも、きれい好きとは一言も言ってないやい！
おはぎ
せっかくほめたのに、
いばって否定することかいな。
だって、塵一つないんでしょ。
くるり
私はね、ほこりは気になって、すぐふき取るんだけど、
物が散らかってるのは平気なんだい！
おはぎ
それも、いばって言うことかいな。
物が散らかった状態で、ほこりをふき取ったところで、
見えるところのほこりしかふけないじゃないか。
くるり
見えないものは、ないものとするんだい！
おはぎ
おまえは、他にいばれることがないのかい。
私が、なんできっちりと掃除するのかわかるかい？
くるり
人から、きちんとしたおかみさんと思われたいため。
おはぎ
そんな下心だけで、続けてらんないよ。
くるり
じゃあ、もともと掃除が好き。
おはぎ
別にそういうわけでもないよ。
でも、自然に掃除をしてしまうわけがあるんだね。
くるり
わかった。きれいにしとかないと、ごきぶりが出るから。
おはぎ、
ごきぶりに脅迫されて掃除してるんじゃ、情けないと思わないかい。
あのね、掃除をするときに、
自分の心の中を掃除しているつもりになってごらんな。
部屋のちらかり具合は、心の状態なんだよ。
そう思うとね、自然にきれいにしようという気になってくるんだ。
奥のほうに、ほこりが見えたとき、
ここは自分の心だと思うと、この次でいいやと思わずに、
自然と掃除してるよ。
くるり
じゃあ、私の心は、ほこりはないけど、
物は散らかっている状態なんだ。
おはぎ
あれもこれもとっちらかして、
それをちょっと動かすと、隠れていたほこりがたくさん出てくるんじゃ
ないかい。
ちょっと、見てみようかね。
くるり
あふぁっ。
おはぎ
何変な声出してんだよ。
くるり
いやん、いきなり人の心の中に手を突っ込むんだもん。
おはぎ
なになに？
「なかなか手に入らない団子をもらったのに、
お腹を壊していて食べられなくて、泣く泣く人にあげた時の未練」
なんだい、これは。
くるり
だって、その団子、今はもう売ってなくて、永久に食べられないんだもん。
おはぎ
そんなの、おなかちゃんの団子でも食べときな。
江戸時代直送のおなかの団子だって、２１世紀では食べられないもんだよ。
こんなもん、捨てちまうよ。
くるり
だって、食物のうらみは忘れられないもん。
おはぎ
あん、これはなんだい？
なんか底の方で変形してるのがあるよ。
なになに、「今年こそ結婚するぞ」。
なんだカビが生えてるじゃないか。いつからあるんだい。
これももう捨てちまいなよ。
くるり
アーン、まだ捨てたくなーい！
カビを払って形を治せば、まだ使えるんだから。
おはぎ
だったら、こんなところにほっぽとかないで、
きちんとしなくちゃ、意味ないだろ。
漠然と持ってるだけじゃ、実現しないんだよ。
くるり
はーい。
おはぎ
あっ、ほらほら、動かしたら、隠れてたほこりが出てきたよ。
なんだ、恋の残骸だらけじゃないか。
こういうものは心の肥やしにしちまわなきゃ、駄目なんだよ。
そして、肥やしにならないものは、さっさと捨てる。
まったく、死んだ恋の思いまで、後生大事に持ってるんじゃないよ。
くるり
捨てたつもりだったのに、やつらめ、こんなところに紛れていたか。
おはぎ
だから、きちんと掃除するんだよ。
さあ、これで新しい恋が入りやすくなる。
しかし、確かにあんたの心の中は、
ほこりみたいな悪い想念はあまりないけど、
なんか、いろんなものがとっちらかってるね。
くるり
いつかしようと思ってることが、たくさんあるからでーす。
おはぎ
それじゃ、いつまでたっても片付くわけはないよ。
とにかく、こうやっていつも私がかたづけてやるわけにはいかないから、
騙されたと思って、今自分は心の中を掃除していると思いながら、
部屋を掃除してごらん。
不思議なもので、部屋も心も、
捨てるべきものとそうでないものの区別がつくようになってくるよ。
部屋をごみで埋めてしまう人たちは、心に問題を抱えてるのを見ても
わかるでしょ。
くるり
部屋をきれいにして、悪いことは一つもないもんね。
気の流れをつかむ風水でも、それは言われてるしね。
そう言えば、夢中で磨いていると、いやなことを忘れちゃうって人もいるね。
おはぎ
そうだよ。
掃除することで、心も掃除される。
すると、運気が流れ込みやすくなってくるんだよ。
くるり
じゃ、今度はおはぎさんの心の中を見せて。
あれ、これ「禿げ之丞さんへの思い」って書いてあるよ。
こっちは「けち衛門さんへの思い」これは「すっとん狂四郎さんへの思い」。
なんだ、自分だって残骸がたくさんあるじゃない。
おはぎ
それは、若いころ、熱を上げた役者の名前だよ。
好いた惚れたといっても、ちょっと違うよ。
くるり
でもおはぎさん、本当の好いた惚れたのご亭主に対する
「どう造さんへの思い」も、どこ探してもないよ。
おはぎ
もう、空気みたいな存在になってるから、
心そのものに同化されちゃったのかもね。
くるり
あっ、あった。
おはぎさん、これ「どうでもいい造さんへの思い」になってるよ。
（発行マガジンより、若干手直しして本文のみ掲載しております。）
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