あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
気分がのらない時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第57号
〜うらやましいの裏にあるもの〜
2005. 11. 6
くるり
みなさん、こんにちは！
今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客様は、
易者のどう造さんのおかみさんで、
町内の広告塔、おはぎさんでーす！
あれーっ、おはぎさん、
今日は、江戸庶民らしからぬ、素晴らしいお召し物で。
どっかの奥方みたいだね。
どっから盗んできたの。
はぎ
人聞き悪いこと言うんじゃないよ。
どう、私だって捨てたもんじゃないでしょ。
こうして身だしなみを整えれば、
隠れていた美貌が花開く、ククク…。
くるり
ククク、苦しい…。
はぎ
ちょっとお散歩してきたら、
みんなが、注目してくれたよ。
くるりはどう思う？
くるり
ほんと、すばらしい着物だね。
しかし、高そうだね。
はぎ
おまえもだ。
くるり
なにが？
はぎ
みんなが注目するのは、
この着物であって、
この着物を着ている私ではないんだよね。
くるり
そりゃ、そうでし…
い、いや、そんなことないよ。
やっぱりさ、江戸時代人だけあって、
年季が入ってるから、
着こなし方はさすがだよー。
いくら着物好きの２１世紀人だって、
こうは着こなせないよ。
はぎ
いくらごまかしたって、
鼻の穴がふくらんでるよ。
本当に、わかりやすいねえ。
くるり
だ、だからさ、おはぎさんは江戸庶民で、
長屋のおかみさんで、
いつもそういう着物着ていないでしょ。
だから、ただ見慣れてないだけだよ。
馬子にも衣装で、見慣れれば
おはぎさんもきっといいとこの奥様だよ。
はぎ
それでほめてるつもり？
だいたい、他の人たちには、
私が江戸時代人で、
長屋住まいのぼんくら易者の女房って
言ってないんだから、
見慣れるとかどうとか関係ないでしょ。
くるり
その前に、そんなこと言ったら、
精神病院に送られるって。
はぎ
なに、もぐもぐ言ってるのさ。
実はさ、自分でも、なんだか落ち着かないのよ。
くるり
なんだ、なら無理することなかった。
でも、虚栄心だけで、
高価なものを身につける人っているからさ、
ひょっとして、おはぎさんもその類？
なんてちょっと思ったりなんかはしちゃったけど。
はぎ
そう思いながら、口では着こなしがいいとかなんとか、
ごまかしてたね。
くるり
そりゃ、本音で言ったら悪いでしょ。
社交辞令も時には大切。
はぎ
つまり、虚栄心が呼ぶものは、
虚栄の言葉でしかないってこと。
みんなが注目するのは、
あくまで着物。
そんないい着物を買って着られることが、
うらやましいだけで、
それがなくなったら、
うらやましがられないんだよ。
それを自分がうらやましがられていると勘違いして、
喜んでるのさ。
地位だってそうだよ。
殿様の前でみんなが頭を下げても、
それは殿様という地位に下げているだけのことだよ。
その人が、殿様でなくなったら、
誰も頭なんか下げないさ。
くるり
自分に対してのものでない羨望のまなざしを、
自分に対してのものと勘違いしてるのか。
はぎ
そう思ったら、
見得をはる意味がないことはわかるだろ。
みんながうらやましがるのは、
物や地位であって、
自分ではないのに、
虚栄の言葉に漬かって喜んでいる。
滑稽だと思わないかい。
本当の意味で、うらやましがられるようになるのは、
自分にしかないもので勝負するしかない。
つまり、人間性だよ。
それがあれば、物や地位がなくなったって、
羨望や尊敬もなくならないのさ。
くるり
でも、人間性で人から羨望を得られるような人は、
人からうらやましがられたいとは思わないでしょ。
はぎ
だから、人からうらやましがられたいと思うこと自体が、
もう間違ってるんだよ
それは、「裏やましい」。
くるり
出た、駄洒落好きの江戸っ子の血が。
はぎ
逆にうらやましがるほうも同じだよ。
「あの人は、あんな優雅な暮らしができて、
うらやましい…。」
なんて思ってても、
その人から優雅な暮らしを抜いたらどうだろう？と考えたとき、
別にうらやましいと思うところはないなと気がつけば、
その人をねたむなんて筋違いだと気がつく。
くるり
そうか、そう考えれば、
人をうらやんで落ち込んだり、
ねたんだりする気持ちも薄れるよ。
はぎ
誰かをねたんでるのかい？
くるり
私が人をねたむようにお見えになって？
うん。
はぎ
くるり
速攻で返事するな。
名前のほうがあとに来てるし。
はぎ
どう考えても、うらやましいと考えられるものなら
それを目標にして頑張る方向に向かうのが、
「うらやましい」の本当の活用法。
お世辞を言ったり、ねたんだり、落ち込むだけの
「うらやましい」なら、それも、「裏やましい」のほうだね。
くるり
よほど「裏やましい」が気にいってるとみえる。
はぎ
だいたい、
高い物を所有する、高い地位につくってのは、
それなりの責任もついてくるんだよ。
その責任能力が伴っていない状態で、
物や地位だけ得て、
勘違いの満足をしているのは、
みっともないよ。
くるり
まあ、持ってない人がどう言っても、
負け惜しみに聞こえなくもないけど。
はぎ
だから、今日はこの着物で来たんだよ。
でも、やっぱり着物にしか注目が集まらないから、
つまらないね。
さっさと返してこよ。
くるり
えっ、やっぱり、盗んできたの？
はぎ
人聞きの悪いこと言わないでくれないかい。
貸してくれるっていうから、借りてきたんだよ。
そうだ、せっかくだからもう少し着てお散歩してこようかね。
いつかこういうのを着られるようになるぞ！
って気合を入れるためにね。
くるり
奇特な人もいるもんだね。
誰が貸してくれたの？
はぎ
それがさ、親切だなと思ったら、
貸衣装屋なんだって。
商売なんだよ、ちゃっかりしてるね。
でも、せっかくだから一番いい、
高いのを借りてきたよ。
あっそうそう、
私は２１世紀のお金は払えないから、
くるりにまわしといたからね。
よろしく。
くるり
わー！先にそれ言えー！
とっとと返してこーい！
（発行マガジンより、本文のみ掲載しております。）
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