あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
気分がのらない時向き編 
バックナンバー総覧へ |
メルマガ登録はのほ本屋から
あっぱれ長屋のプラス話 第106号
〜 非のないところに腹は立たない 〜
2008. 11. 6
くるり
みなさん、こんにちは。
今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客様は、
大工のたて太郎…わっ、どうしたの、その顔！
屋根から落ちてぶつけただけ？
たて太郎
だけとはなんだ、だけとは。
ぶつけたんじゃなくて、ぶつけられたんだ。
くるり
いったい何に？
たて太郎
手だよ、手。
くるり
手がぶつかったくらいで、
そんなに腫れる？
たて太郎
拳がぶつかってくれば、腫れる。
くるり
早い話が、殴られたってことか。
あーあ、ついにまたけんかしちゃったんだ。
しなくなったと言ってたのに。
前に、けんかは、反発しあってるのではなく、
相手の悪い気を受け入れてあげて、
お手々つないで増幅してあげる行為だから、
そこまで人が良くならなくてもいい、
協力してやるのは馬鹿らしいってことに気がついた、
って言ったのは、たて太郎だよ。
たて太郎
間がさしただけだ。
おいらは、いつものとおり、
合わせるつもりはなかったんだ。
おめえの悪い気に合わせる気はねえ、
たて太郎さまは、進化したのよ、
へへ、ざまあみやがれってなもんでな。
だが、ちょこっとむかついたんで、
それとなく皮肉を混ぜたら、
奴はその言葉尻をすかさず捉えて、
食らいついてきやがった。
で、おいらもつい手を出しちまったんだ。
くるり
でも、その腫れ方では、
手を出したほうが、
結果的にひどくやられてる気がするんですけど。
たて太郎
男っぷりのいいこの顔に対する妬みが加わってる分、
おいらは顔中心に狙われたんで、目立つだけだ。
くるり
私もひっぱたいていいですか。
たて太郎
なんか言ったか？
しかし、悪い気ってのは、
油断ならねえな。
とっかかりがないと相手にくらいつけないから、
そういうちょっとしたところでも、
すかさず食らいついてくる。
もっとも、いくら表面上だけ取り繕っても、
内心、腹をたててしまえば、
すでに気を合わせちまってるわけだ。
そうなれば、
相手の悪い気と引き合う力が強まるから、
隙ができやすくなる。
そこでつい、ひきずりこまれちまった。
くるり
それってすべてを、相手の悪い気のせいにしてません？
たて太郎
だから、おいらも反省して、
なぜ腹をたててしまったか、
ということから考えてみた。
そもそも、腹をたてるのは、
自分の意に反することをされたり、
侮辱を受けたり、
迷惑をかけられたり、
つまりは、自分がないがしろにされたと感じた時だ。
要は、自分の立場からの目線になっている。
くるり
「だから、我を捨てればいいんだ」
なんてまとめるんじゃないでしょうね。
確かに、我の強さから腹をたててしまう場合もあるけど、
本当に向こうが悪くて、
こちらに非がないなら、
自尊心から腹をたてる場合もあるんだよ。
たて太郎
おめえなら、そう言うと思った。
おいらも
「これは決して我から出る腹立ちではない。
自分の尊厳を守るためだ。」
と思ったから、手が出ちまった。
くるり
そうでしょ。
我から出る喧嘩はだめだけど、
自分の名誉を守るためとか、自尊心からとか、
怒っても致し方ない場合もあると思うよ。
たて太郎
だがな、その自尊心の考えで行くと、
それを守るために、
相手の悪い気に合わせて、
一緒に増幅させてあげるってのは、
この間言ったみたいに、
相手に力を貸しているおかしなことになる。
自尊心を守るどころか、
自分も加わって、自分をぼろぼろにしてるようなもんだ。
くるり
でも、自尊心はどうなる。
それに、ないがしろにされて頭にくるのは、
それだけ自分を大切にしてることでもある。
たて太郎
自尊心と我を線引きする位置は、
人間の出来具合によって違う。
そして、できた人ほど腹をたてねえ。
だが、おめえの考えでいけば、
ちょっと気にいらないだけで腹をたてる人のほうが、
どこまでいっても怒らない人より、
自分を大切にしてるということになるぞ。
くるり
ほんとだ。
自尊心があるからこそ、怒らない人になれるのに、
変だね。
たて太郎
つまりだな、自分を大事にする思いが本物にならないと、
相手と悪い気で同調しあう行為が自分をも傷つける、
ということが見えてこないということだ。
くるり
たて太郎は、そこまで本物の思いでなかったから、
それが見えなくて、
相手の悪い気に同調してしまい、
心だけでなく、
顔も殴られて傷ついた。
たて太郎
そんな例を出すな、
と言いたいところだが、
例えとしては、わかりやすい。
おいらが同調したことで、
おいらも悪い気を出す。
だから、人を殴ることができる人間になっちまうわけだ。
同調したばかりに、
悪い気にふさわしい人間に簡単に蹴落とされた。
いや、正確には自分で落ちたんだ。
悪い気を向けるのは相手の問題だが、
殴るかどうかは、おいらの意思で決まることなんだからな。
そして落ちてしまえば、
どちらが悪いかなんてことは関係なくなる
くるり
相手を殴るたびに、
自分を殴ってるのと同じことになる。
たて太郎
そうだ。
顔は相手に殴られ、心は自分に殴られている。
だから、反省して後半は、殴られっぱなしになった。
くるり
そうなったのは、違う理由だと思う。
でも、自分に非がない場合は、
ないがしろにされたことを怒らないっていうのは、
むずかしいよね。
たて太郎
そこも、よく考えると逆なんだ。
自分に非がないのなら、
なおさら、怒る必要はどこにもねえじゃねえか。
自分をないがしろにしたのは、
相手の勝手であり、相手の人間性であり、
相手の問題だ。
それなのに、腹がたつのは、
自分をないがしろにしている相手を、
自分の思うように改めさせようとしてしまうからだ。
くるり
だって、名誉を傷つけられたとしたら、
相手のためにも改めさせなきゃ。
たて太郎
そういう心から出るものは、
ただの我や驕りにすぎねえんだ。
また、互いが自分の主張のみが正しい、
という前提になってしまうから、
悪い気で同調しあう。
そしてなぜそれをしてしまうのかと言えば、
自分を信じきれてねえ部分があるんだよ。
だから、どんとかまえていられねえで、
相手を変えさせることで、自分の尊厳を守ろうとしてしまう。
結果、悪い気で自分も傷つけることになる。
これが、おいらの失敗の原因だ。
くるり
ひょっとして、我から腹をたてることはあっても、
自尊心を守るために腹をたてるなんてことは、
ありえないことなのか。
たて太郎
たとえあったにしても、そのときの怒りは、
相手でなく、自分のいたらなさに向かうはずだ。
そうなってこそ、ぶれない自分、
悪い気に同調しない自分、
信じられる自分、
自分を大事にする自分になれる。
くるり
そして悪い気を出す人間ではなく、
悪い気を受け付けない人間になれるんだ。
たて太郎
この間言ったように、
そこのところは気がついてたんだがな、
我を自尊心と勘違いしたところで失敗した。
くるり
なるほど、失敗もしてみるものだね。
これからも、たくさん失敗して、
いろいろと教えてね！
たて太郎
そんなに期待満々で、
人の失敗を待ち望むな。
（発行マガジンより、本文のみ掲載しております。）
| 前←気分がのらない時向き編 | 気分がのらない時向き編→次 |
ランダムで読まれる場合は、以下よりお選びください。 |
|
バックナンバー総覧へ |
|
| １ 気分がのらない時向き一覧 | ２ 失恋や希望を失ってる時向き一覧 |
| ３ 憂鬱で毎日に嫌気がさした時向き一覧 | ４ 迷ったり悩んでいる時向き一覧 |
| ５ やる気を流し込みたい時向き一覧 | ６ 幸せになりたい時向き一覧 |
メルマガ登録はのほ本屋から |
このページのＴＯＰへ |
 |
 |
|