あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
失恋や希望を失ってる時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第36号
〜誰もが知ってる悟りの境地〜
2004.11. 12
くるり
みなさん、こんにちは。
今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客様は、
ご隠居さんのおかみさん、おふくさんです。
ふく
こんにちは。
なんだか、くるりのところは、噴火だ台風だ地震だって、
えらいことになってるようだね。
くるり
そうなんだよ。
今年は、大変なの。
おふくさんたちなら、神様が怒っているって思うんだろうね。
ふく
人間としては、なすすべがないんだから、
神様の力としか考えられないだろう。
天災の被害は、大変だからね。
くるり
天災ばかりは、時代が変わっても、
大変なことには変わりないんだよね。
ふく
でも、少しはくいとめることもできるようになったんじゃないかい？
くるり
そりゃ、多少は江戸のころより、被害をくいとめる技術は
進んだとは思うけど、克服はまだまだ無理だね。
ふく
本当に、天災はむごい仕打ち、ひどい仕打ちをしていくからね。
くるり
でもどんな目にあわされても、自然が相手では、
怒りのもっていきようがないところが、またつらいよね。
ふく
神様が遠くなってるくるりたちでも、
やっぱりそう思うんだね。
天災に対しては、人間は、
恨みつらみを言っても仕方ないって、
悟ってるんだよね。
くるり
悟るしかないじゃないの。
天災に文句言っても仕方ないことくらい、
誰もがわかるよ。
ふく
人間の力の及ばない天災に対しては、
どんなに理不尽でも、どんなにつらくても、
現実を受け入れることしか許されない。
そして、仕方ないってあきらめて、
前に進むことしかしか道はない。
それを人間は、受け入れるんだよね。
くるり
受け入れざるをえないよ。
だいたい、天災に遭ったときは、
恨みつらみを言ってる場合じゃないんだよ。
とにかく現実問題として、暮らしを立て直すことが先決。
今後の不安のほうが、大きいんだから。
ふく
そうやって、今後のことに不安を感じるのも、
気持ちが前を向いているからだよ。
くるり
そうか…。
そういう意味では、本当に人間って、
人間の力の及ばないものに対しては、
誰に言われなくても、悟って対処してるんだね。
ふく
もう一つ、人生には天災と同じように、
自分の力ではどうにもならないものがあるんだよ。
だけど、そちらに対しては、恨みつらみを言ってるだけで、
なかなか悟れないことが、とっても多い。
くるり
それってなに？
ふく
運命。
くるり
「♪ ジャジャジャジャーン！」
ふく
どうしたんだい、急に。
くるり
あら、ごめんあそあせ。
つい、ワタクシの教養がこぼれてしまって…。
おふくさんたちの江戸時代に、
他の国でこういう曲を作ってた人がいたのですよ。
これぞ、まさしくベートーベンの交響曲第５番ハ短調「運命」！
あら、ごめんあそあせ。
また、ワタクシの教養がこぼれてしまって。おほほ。
ふく
へえ、くるりにもそんな教養があったとはね。
でも、なんだね、その運命はじゃじゃじゃじゃーんで終わりなのかい。
ご大層な名前の割には簡単な曲だねえ。
くるり
いや、もちろん、そのあとも曲の続きはあるに決まってるでしょ。
でもとりあえず、おふくさん、脱線しないで話の続き！
ふく
突然、雄叫びあげて、脱線させたのはおまえじゃないの。
くるり
あれ？
ふく
現実を受け入れて、前に進むしか道がないのは、
天災も運命も同じなんだよ。
落胆したとしても、天災の場合は、それができる。
ところが、運命に対しては、恨みつらみの思いにとらわれて、
前に進むことができなくなることがある。
くるり
そうだね。
なんでだろう。
ふく
それは自分の努力次第で変えられる部分までも、
運命のせいにしてしまってるからなんだよ。
こんなところに生まれ落ちたのが、身の不遇、
こんな顔に生まれたのが、身の不遇。
たしかにそれは、先天的に定められたもので、
自分の責任ではないよ。
でも、生まれ落ちたところが不遇なら、そこから這い出せばいいんだ。
身分制度がある私らの時代より、それはずっとたやすくなってるはずだよ。
それに人格磨けば、顔のつくりも変わってくるんだよ。
これは、本当だよ。
卑下する自分の心が、なお醜くしてるだけ。
くるり
だから、なぜにそこで私の顔をじっと見る。
だいたい、今は、顔の作りそのものが変えられます。
ふく
ひぇー、おそろしい。
でも、それならなおさら、変えられない運命ではなくなったってことだね。
確かに先天的に変えられない運命はある。
自分ではどうにもならない流れもある。
それが、自分に災いをもたらすどうしようもないものなら、
天災と一緒なんだから、不運を恨むより、
立て直すために前向きにならないとね。
くるり
でもけっこう今は、運命は変えられるって思う人は多いよ。
それに性別だって、変えられるもんね。
生まれる日も、人間の都合で調整しちゃったりするくらいだし。
ふく
ひえー、生まれる日まで変えちゃうのかい。
そこは神様の決めるところだよ。
おそろしや、おそろしや。
くるり
でも、そうなると、どうにもならないって思ってることも、
その後の対処しだいで、別の展開の要因になっていけるんだ。
そして、気がついたら、どうにかなっていたってね。
だから、現実の厳しさを運命のせいにだけは、してはいけないんだね。
ふく
人は、順調にいってるときは、
神様は信じてないくせに、
困ったときとか、うまくいかないときには、
神様のせいにしたがるんだよ。
逆にするくらいでちょうどいいよ。
くるり
人生につまづいて穴に落ちるのではなくて、
つまづいた勢いで、ぽーんと遠くへ飛ぶ心構えでいればいいんだ。
たとえて言うなら、「転んでもただでは起きない」の精神。
天災はもうおきないという保証はないけど、
壊れたままにしておけないから、壊されれば人は何度でも修復する。
たとえて言うなら「七転八起」の精神だね。
ふく
くるりにしては、なかなかできたお言葉でした。
くるり
あら、ごめんあそあせ。
また私の教養が、こぼれ落ちてしまいましたわ。
ふく
さっきのべとべと弁とかなんとかいったお人の「運命」ってのも、
じゃじゃじゃじゃーん！のあとがあるって言ったよね。
最初に衝撃、そのあとに続く流れがあって名曲になる。
もし、じゃじゃじゃじゃーんしかなかったら、
価値のある曲にはならないよ。
運命が問題なのではなく、後に続く部分が問題なんだよ。
で、せっかくだから、最後まで聞かせておくれ。
くるり
へっ？
まっ、まあ、長い曲だし…。
ふく
別にかまわないよ。
くるり
かっ、歌詞もないし、退屈するだけだよ。
ふく
そうかい。でも５番っていうからには、１番から４番もあるんだろ？
それはどんなのだい？
くるり
へっ？
さ、さあ…。
ふく
５番のあともあるのかい？
くるり
たっ、たしか、あったかな…。
ちょ、ちょっと待って…。
ふく
何こっそり調べてんだよ。
なんだい、くるりの教養は、あふれてこぼれ落ちてるんじゃなくて
こぼれ落ちたら、すぐなくなっちまう程度のもんかい。
（発行マガジンより、若干手直しして本文のみ掲載しております。）
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