メルマガ「あっぱれ長屋のプラス話」より 気分で読むバックナンバー


あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義

憂鬱で毎日に嫌気がさした時向き編  





バックナンバー総覧へ


メルマガ登録はのほ本屋から




            
               あっぱれ長屋のプラス話 第92号   

               〜 自殺が頭をよぎる時 その2 〜       
                                  2007. 11. 18     



 
   くるり
   みなさん、こんにちは。
   今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客さまは、
   大家でご隠居のぼた衛門さんのおかみさん、
   おふくさんです。
   
  ふく
   こんにちは。
   今日は、うちのおめでた屋の番頭の話をしようかと思ってね。
   自分で命を絶ってしまう人が減らない21世紀だから。
  
  くるり
   時たま、ご隠居や小僧の茶さじ郎ちゃんの話に出てくる
   番頭さんだね。

  ふく
   その番頭さんじゃなくて、前の番頭さんだよ。
   今は暖簾わけして、店をかまえてる。

  くるり
   独立した人もいるんだ。
   そういえば、以前ご隠居さんが自殺について話した時から、
   もう3年以上たったんだね。
   相変わらず、自殺は減る気配すらないけど。
    
  ふく
   だから、命を絶とうとした経験のある、
   前の番頭の話をしたいんだよ。   
   その番頭さんが、小僧から手代になった頃、
   張り切りすぎて、
   大失敗をしてしまったことがあってね、
   それで、姿を消してしまった。
   しかも、台所の包丁と共に。
   それに気がついたときは、
   私は腰が抜けてしまってね。
   当時主人だったおじいさんは、
   髪の毛が抜けてしまったって言ってたけど。
    
  くるり
   それは、ただの若はげだと思う。
    
  ふく
   私もそう思っているんだけどね。
    
  くるり
   なんて、話してる場合じゃないや。
   で、どうしたの?  
  
  ふく
   そりゃ、あわてて探しましたよ。
   見つけたのは私だったけど、
   もう安堵したのなんの。
  
  くるり
   間に合って、良かったね。
    
  ふく
   でも、番頭さんは、
   私に見つけられたからではなく、
   その前に、ちゃんと自分で思いとどまれていたんだよ。
   そのわけを、こんなふうに話してくれた。
   番頭さんは、自己嫌悪に陥って、
   こんな自分が生きていても迷惑かけるだけだって、
   思い込んでしまった。
   そして、意を決して、包丁を自分の胸に向けた時、
   心の臓がどくどく波打ったんだって。
    
  くるり
   そりゃ、波打つでしょ。
    
  ふく
   ところが、そのどくどくが、
   だんだん大きくなってきたかと思うと、
   かつて経験したことのないほどまで大きくなった。
   そして、しまいには、
   そのどくどくに包み込まれてしまったそうだよ。
   その時、そのどくどくが番頭さんに、
   あることを必死に伝えていることに、気がついた。
    
  くるり
   なにを伝えてきたの?
    
  ふく
   「生きてるんだよ、おまえはこうして生きてるんだよ、
   生きてるから私の鼓動を感じているんだよ。
   私もこうして働いてるんだよ、頑張ってるんだよ。」
    
  くるり
   そうだよ、そうだよ!
    
  ふく
   この鼓動で、番頭さんは我にかえった。
   すると、番頭さんを包んでいた大きな鼓動は、
   「こっちも一生懸命やってるんだから止めんなよ、ばかやろ!」
   そう言ってまた胸の中に収まったって。
    
  くるり
   なかなかたのもしい心臓みたいだけど、
   柄は悪いね。
    
  ふく
   その時に、番頭さんは気がついたそうだ。
   人の生き方は、心で決まるから、
   常に心が主導している。
   その心がひしゃげて、
   生きる気力をなくしてしまったから、
   自分は死のうと思った。
   主導する心がだめになっては、
   生きていても意味がないとね。
   でも、待てよ。
   心がひしゃげても体があれば、生きられるけれど、
   いくら心がやる気満々でも、
   体がだめになったら、生きられない。
   ということは、
   心が体を主導してるのではなく、
   体が心を補佐してるんだと。
   だからこそ、体はどんなことがあっても、
   寿命があるうちは、一生懸命働いている。
   多少壊れたって、補佐しようと頑張っている。
   それを、心の都合だけで止めようってのは、
   子供が、育ててくれた親を殺すようなもんではないのか。
     
  くるり
   確かに、心がしっかりしてれば、
   体も大事にできる。
     
  ふく
   その心が使い物にならないほどだめになった自分なのに、
   体のすべては、
   今日も一生懸命各自の役目を果たして、
   働いてくれている。
   自分の心を生かすために頑張ってくれるこの体があるんだから、
   自分の失敗から逃げるのではなく、
   受け止めよう。 
   この体に守られている心で、
   自分ができる限りのことを、
   この体を使ってやってみよう!
   と、そこまで思ったときに、
   私に後ろから、
   「捕まえた!」ってねじ伏せられたんだって。
   その時は、びっくりした心の臓が、
   どっきん!って言ったそうだけどね。
  
  くるり
   番頭さんは、逃げた鶏か。
   捕まえた!なんて言われたら、
   なお鍋にされると思うよ。

  ふく
   それを言うなら、罪人扱いか、だよ。
   鶏扱いで鍋にまでしてるのは、
   くるりじゃないか。
   だけど、私も夢中だったんだよ。
   絶対に逃げられるのは許されないから。

  くるり
   でも、無茶しないで良かったね。
    
  ふく
   それそれ。
   自殺は、無茶な行為。
   つまり、無茶しなくちゃできないものだよ。
   どんなに心がしぼんでしまっていても、
   「生きたい」って思いはちゃんとあるからこそ、
   無茶な行動で、
   頑張っている体を裏切らなくてはならない。
   それを超えるには、どれだけの精神力を必要とすることか。
   でも、その力は、本当は、
   「生きたい」という思いに使うために、
   出てくるものなんだよ。
   それを「逝きたい」のほうに使ってしまうから、
   無駄で無益なものになってしまう。
  
  くるり
   だから、「死ぬ気になればなんでもできる」って、
   言うんだね。

  ふく
   21世紀には、安易な集団自殺なんてのもあるみたいだけど、
   一人で死ぬ勇気がないというのは、
   思いっきり迷いがある証拠だよね。
   その迷いこそ、生きる気力そのものじゃないか。
   心の臓の声も聞こえてるからこそ、
   一人で死ねないんだよ。
   たとえ一人で死のうとしても、
   その前には、散々迷うのが本当だよね。
   それも、生きたい思いがある証拠。
   それを無理に「逝きたい」に置き換える必要はない。
   生きててもいいことない、なんて言ってるようでは、
   逝ったらなおいいことない。
   
  くるり
   その番頭さんだって、いくら心がぼろぼろでも、
   意を決し、さらに我を忘れるところまでいかなければ、
   刃を向けられなかったのは迷いだもんね。
   そこで、心臓が教えてくれたから、
   生きる力に目が向いて、
   出てきた力も正しく使うことができた。
   
  ふく   
   生きる力は、思っているより、
   したたかにあるんだよ。
   どんなに落ち込んでも、傷ついても、
   絶対になくならない。
   ちょっと見えなくなってしまうだけ。
   体は、それを知ってるから、
   心がめげていても、生きるために補佐し続ける。
   
  くるり
   自殺まで考えるのは、よほどのことだけれど、
   どんな理由も、命を捨てるに値する理由にはなりえないからなあ。
     
  ふく
   そうだよ。
   番頭さんだって、もしその時死んでしまってたら、
   失敗して自殺しただめな手代で終わってしまうところだったよ。
   それが、一軒の店を持った主となって、幸せに暮らしている。

  くるり
   一時の状況で、一生を捨てるなんてのは、
   すごく馬鹿らしいことだ。
  
  ふく
   それとね、番頭さんは、死ぬことを思いとどまった瞬間から、
   人生の見方が変わったって。
   いいことはもちろん、悪いことまで、
   あの時、命を絶ってたら、今のことは遭遇できなかったと思うと、
   すべて感謝して、前向きに受け取ることができるようになったそうだよ。
    
  くるり
   そういう意味でも、
   自殺を考えてしまうのは、
   死ぬためではなくて、
   生きるためなんだね。
   だって、そこまで行って帰ってきたからこそ、
   そういう強力な力を得たわけでしょ。
   そうわかってれば、行き詰った時にも、
   自分の中にある生きたい思いに、
   目が向く見方ができるよ。
      
  ふく
   もし、今日の話を、私からではなく、
   本人から聞いたとしたら、
   もっと心に伝わる話になるでしょ。
   経験をしたからこそ、それだけ重みのある話ができる。
   つまり、そのことがしっかりと
   番頭さんの人徳となった証だよ。
   そう考えたら、死ぬことを考えるのは、
   人生から逃げるためではなく、
   後の人生のために生きる力を蓄えているってことも、
   よくわかるでしょう。
   私の年の功だけでは、伝えられないものを、
   番頭さんは得てるんだからね。

  くるり
   虎穴に入らずんば虎子を得ず、
   みたいなもんで、
   人生のお宝を命がけで取りにいってるまさにその時が、
   自殺を考えてしまってる時なんだね。
     
  ふく
   体主導で命を終わることは、寿命、
   心主導で命を終わることは、自殺。
   命を亡くすことはどちらも同じなのに、
   体主導の時だけは、寿の命と表わす意味を、
   しっかりかみしめて生きなくちゃね。
   目先の辛さで、後の人生も同じと思うことなかれ。 

  くるり
   心臓は、体にとっても大元だけど、
   心の臓器でもあるからこそ、
   心臓っていうのか。
   嬉しいときだって、どきどきするし。 
   あ、番頭さんがどくどくと聞こえたって言うのは、
   毒毒って言ってたのかも。
        
  ふく    
   同じ体験をしたら、皆が死ぬことを考えるかっていったら、
   そんなことないよね。       
   そのことも忘れずに。
   それに自殺は、究極の自己中心的な行為だよ。
   そういう、視野の狭い見方しかできなくなってるから、
   打開できなくて追い込まれてる、って面もあるんだよ。
 
  くるり
   21世紀では、
   人をまきこんだり、
   社会の動きをとめて、
   大勢の人に迷惑かけたりってことも、
   よくある。
   死ぬ必要もないけど、
   関係ない人にまで恨まれて死ぬ必要は、
   もっとないはず。

  ふく
   そうそう、その時のおじいさん、
   番頭さんにこんなこと言ったんだよ。
   おまえが死んだら、おまえの親兄弟は嘆き悲しみ、
   小僧になど出さなきゃよかった、と、
   一生後悔を背負っていかなければならない。
   だが、店の主としての私にとっては、 
   店に迷惑をかけられたうえに、
   勝手に死なれたら、迷惑の上塗りをされるだけ。

  くるり
   えっ。ご隠居らしからぬ言葉。
 
  ふく
   まだ、後があるんだよ。
   ということは、おまえが死んだら、
   おまえを本当に大事に思ってくれてる人を、
   嘆き悲しませ、
   お前の代わりに重い念を一生背負わせ、
   私にも、恨み心を持たせることになる。
   私を、そんな人間にさせないでくれ。
   かといって、店の主の立場を捨てて、
   おまえに愛情を注ぐぼた衛門として、
   おまえの死を嘆き悲しむほうもごめんだ。
   だから、生きて償ってもらわなきゃ意味がない。
   おまえには、一生おめでた屋とつきあってもらうからなって。
   暇を出されるとばかり思ってた番頭さん、
   まあその時はまだ手代だったけど、号泣してね。
   あの時は、私もちょっと、
   うちの人に惚れ直したね。
  
  くるり 
   そこまで言っても、
   ちょっとだけか。

  ふく
   そういうことではなくてね、
   いつも愛情がたくさんあるから、
   ちょっとしか増やしようがないの。

  くるり
   ごちそうさまあ。  
   今日は、番頭さんが命をかけて得てきたものの話だから、
   いつもとは、重みが違ったし、満腹だ〜。
    
  ふく
   いつもは、命がけでない軽い話ばかりで悪かったね。

  くるり
   い、いや、そういうことではなくてね、
   いつも軽い話がたくさんあるから、
   ちょっとの重みもありがたく…
   いや、そうじゃなくて、
   人生、軽く見てると、ちょっとの重みにも耐えられなくて、
   いや、そうじゃなくて、
   あ、これはいいんだ、
   だから…

  ふく
   自分でも、何言ってるかわからなくなってる。
   人間、つまらないことでうろたえて、
   自分で何してるかわからなくなったらいけない、
   ってことだよ。
   くるりもたまには、役にたつね。


         

  
 (発行マガジンより、本文のみ掲載しております。)

    
前←憂鬱で毎日に嫌気がさした時向き編 憂鬱で毎日に嫌気がさした時向き編→次

ランダムで読まれる場合は、以下よりお選びください。

バックナンバー総覧へ

1 気分がのらない時向き一覧 2 失恋や希望を失ってる時向き一覧
3 憂鬱で毎日に嫌気がさした時向き一覧 4 迷ったり悩んでいる時向き一覧
5 やる気を流し込みたい時向き一覧 6 幸せになりたい時向き一覧

メルマガ登録はのほ本屋から

このページのTOPへ





あっぱれぷらすサイト HOME TOP
 あっぱれ長屋へいらっしゃい案内  ぷらっとぷらす小路入口案内
 ・あっぱれ長屋のご隠居大家夫婦 
 ・あっぱれ長屋流明るい悩み方の鉄則
 ・おなか茶屋
 ・ある日のあっぱれ日誌
 ・メルマガ「あっぱれ長屋のプラス話」気分で読む バックナンバー
 ・のほ本屋
 ・松竹梅子の小遣い稼ぎの口入屋
 ・和・は・は
 ・オリジナル&メモリアル
 ・やる気元気癒しのCD伝言板
 ・楽して楽しく覚える英語
 ・SOHOやる気まん店
 ・はっけよい八卦良い占い部屋
 ・七福神占い
 ・潜在おみくじ










和・は・は ぷらっとネットショップ
あっぱれ長屋へいらっしゃい!

HOME あっぱれぷらすサイト案内


ご隠居大家夫婦

あっぱれ長屋流悩みに出会ったら


あっぱれ長屋の住人たち

あっぱれ長屋流明るい悩み方の鉄則


おなか茶屋

あっぱれ長屋流人生の進み方


メルマガ 「あっぱれ長屋のプラス話」
気分で読むバッグナンバー総覧


おまけ
ある日のあっぱれ日誌


ぷらっとぷらす小路

のほ本屋


松竹梅子の小遣い稼ぎの口入屋


和はは


オリジナル&メモリアル


やる気元気癒しのCD伝言板


楽して楽しく覚える英語


SOHOやる気まん店


はっけよい八卦良い占い部屋


七福神占い


潜在おみくじ



サイトマップ