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あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義

憂鬱で毎日に嫌気がさした時向き編  





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                あっぱれ長屋のプラス話 第95号   

               〜 与えられていないものの意味 〜       
                                   2008. 1. 20



 
  くるり
   みなさんこんにちは。
   少々遅めのご挨拶ですが、今年もよろしくお願い申し上げます。
   さて、2008年の東京にお江戸から一番のりしてくれたのは、
   元武士の親又天之太助さんです。
  
  天之太助
   今年もあっぱれ長屋一同を、よろしくお願い申し上げます。 
   今日は、私が武士だった頃、
   所用で遠出した道中で出会った男の話だ。
   その男は足が少し不自由ながらも、
   たくさんの荷物をかついで歩いていた。
   気になって話を聞くと、
   男は三太という指物職人で、
   生活に役立つ物資を見繕っては、
   時々こうやって山奥の不便な村々まで、
   運んでいるのだという。
   なんで指物職人がそんなことをしているのかと聞くと、
   ただ自発的に自前でやっているだけだと言うんだな。
  
  くるり
   へえ、えらい人なんだね。
  
  天之太助
   感心するのはまだ早い。
   この三太という男、
   幼いときに両親と死に別れ、
   他人の中で肩身の狭い思いをして育ってきた。
   足も、生まれつき悪かったらしい。
   相当な苦労をしてきたんだ。
  
  くるり
   それなのに、そんな慈善的なことまでしてるなんて、
   本当にえらい人だ。
  
  天之太助
   まだ感心するのは早い。
   その人がなぜそんなことを始めたかだ。
   三太は足は悪かったが、手先は器用だった。
   そこで、指物職人として面倒を見てくれるという親方に預けられた。
   修業は厳しかったが、
   そこでようやく初めて、
   三太は家族の温かさというものを知ったそうだ。
   いつか恩返しを、と感謝する三太に親方は、
   「恩返しをするなら、俺ではなく世の中にしろ。」
   といつも言っていた。
  
  くるり
   その親方も、えらいね。
  
  天之太助
   三太が独立した後、
   親方は年をとってきたのを機に仕事をやめ、
   おかみさんと二人で、郷里の山奥の村に帰ってしまった。
   そこで三太は、山奥での暮らしは不便だろうと、
   役にたちそうな生活用品や食糧などを見繕っては、
   時々顔を見に行っていた。
   そのうち、三太が行くと、
   村人たちが礼を言いにやってくるようになった。
   実は親方は、三太が苦労して持っていく品物を、
   他の村人たちにあげていたんだな。
  
  くるり
   さしもの指物師三太もどっと力が抜けたかもね。
   せっかく親方のために、苦労して持っていってるのに。

  天之太助
   三太も、正直最初はそう思ったそうだが、
   かといって、親方だけに使ってほしいと言うのも変な話だ。
   もちろん親方だって、いらないからあげてるわけじゃなく、
   より必要な人に使ってもらうためにあげているんだ。 
   それが結果的には、親方だけではなく、
   村人みんなに喜んでもらえている。
   さすが、「恩返しは世の中に」が口癖の親方だけのことはある。
   その意味が、わかった気がした。
   それから、その村だけでなく、
   他の貧しくて不便な村にも、
   物を届けるようになったそうだ。
   指物職人の腕を生かして、
   自分の作った物を持っていったり、
   道具の修理をしてあげたりすることもある。
   自分の力では限られるが、
   できるだけ続けたいと言っていた。
  
  くるり
   親方も三太さんも、本当にえらい人だ。
  
  天之太助
   仕事が順調に入ってくるのも、
   親方が仕込んでくれた腕のおかげ。
   だからこそ、こういうこともできると言う。
  
  くるり
   どこまでもえらい。
   なんだか私、今回はえらいしか言ってないんですけど。
  
  天之太助
   その男のすごいところは、
   それだけではない。
  
  くるり
   まだあるの?
  
  天之太助
   この男は家族がなかったから、
   それまでは他の家族を見ても、
   寂しさしか感じられなかった。
  
  くるり
   泣ける話だ。
  
  天之太助
   それが、親方の家で、
   家族の温かさを知ることができたわけだが、
   もし、自分が普通に育っていたら、
   今の自分が感じたような思いでもってまでは、
   その温かさを感じ取れなかったろうと言う。
   自分の人生にはそれが与えられてなかったゆえに、
   より多く見えるものがあり、
   より多く感じとれたものがあった。
   そこから生まれた思いで、
   今の自分の人生ができた。
   自分の人生に、普通の幸せがなかった意味が、
   今はよくわかる。
  
  くるり
   つまり、
   ないことで得るものがあるためになかった、
   ってことだね。
  
  天之太助
   ややこしい言い方だな。
   その男の話を聞いていて、
   ある直参の武士を思い出した。
   そやつは、
   与えられたお役目が手抜きしようと思えば、
   いくらでもできるのをいいことに、
   最低限のことしかせず、
   それもお茶を濁すような程度だ。
   一生懸命やったところで、
   もらうものが変わるわけではないのだから、
   やるだけ損というのが、
   そやつの言い分。
   だが、それは、もらうものに見合う働きをしていて、
   はじめて言えることだろう。
   最初から見合ってる働きもしてないのに、
   なんて腐った野郎だ、と思った。

  くるり
   21世紀の政治家や公務員の中にも、
   似たようなのは、うようよいるなあ。
  
  天之太助
   それは困ったもんだ。
   そやつも、
   決められた禄高が入ってくるのは当然のことと思っているから、
   そういう寝ぼけた論理が吐けるんだ。
   もし、自分の働き次第で収入が変わる町人が、
   そんな寝ぼけたことを言っていたら、野垂れ死にだ。
   ぬるま湯につかって寝ぼけたそやつより、
   人生を深く生きている三太のほうが、
   どれだけ裕福なんだろうか、
   と思った。
  
  くるり 
   同じにおぎゃあと生まれてきても、
   一方は義務ではないのに、責任として果たせる人間、
   一方は義務なのに、責任を果たしていない人間になってしまう。
   えらいの違いは、えらい違いだね。
  
  天之太助
   またややこしい言い方だな。
   その違いは、
   ないことで見えるものを見ている人と、
   あるのに見えてない人の差でもある。
   他人も自分も大事にできる人間になるか。
   どちらも大事にできない人間になるか、でもある。
  
  くるり
   与えられなかったから見えるもの、
   与えられてるから見えないもの、
   それを知ることは大事なんだね。
   
  天之太助
   そうだ。
   親方が三太が持ってくるものを、
   自分より必要とする村人に使ってもらおうとするのも、
   山奥では手に入らないものだからこそ、
   村人には、そのありがたみが町で暮らす人以上にわかると
   知っているからだ。
   逆に町では手に入らないものであれば、
   町の人には村人以上にそのありがたみが 
   よくわかるはず。
   町と村で両方暮らした親方だから、
   それを感じての行動でもあったわけだ。
   
  くるり
   人生で自分に与えられてないものってたくさんあるけれど、
   それに対して、
   不平や不満やグチなど言ってるのはお門違いで、 
   それを活用しなくちゃいけない。
  
  天之太助
   だから、金もない、男もない、美貌もない、頭もない、
   見事にないない尽くしのくるりには、
   それだけ見えるものもたくさんあるということだ。
   喜んで頑張れ。
  
  くるり
   この励ましを素直に受けていいものか。
    
  天之太助
   しかし、この男の話は、21世紀でも有名なはずだから、
   くるりも知っていると思ったんだがな。
 
  くるり
   えっ、そんな有名な人なの?
   
  天之太助
   21世紀では師走に
   「苦しみます」というお祭りがあるだろう。
   師走の初めに来たら、
   それがあるということで町が浮き足だっていて、
   まるで「楽しみます」って感じだったけどな。
   その時に聞いてきた話では、
   そのお祭り本番の日の前夜祭には、
   大きな荷物をかついで、
   贈り物を届けにやってくる男がいて、
   その男の名前が「三太苦労す」って言うそうじゃないか。
   ははあ、あの三太のことが
   語り伝えられてお祭りになったんだなって、
   すぐわかった。
   だから、今度くるりのところへ行く時は、
   三太の話をしようと思ったんだ。
    
  くるり
   知らないから見えるものって、
   いろんな意味ですごい…。
  


 (発行マガジンより、本文のみ掲載しております。)

    
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