あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
迷ったり悩んでいる時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第99号
〜 陰陽が教えてくれる 〜
2008. 4. 13
くるり
みなさん、こんにちは。
今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客様は、
異色の易者のどう造さんです。
どう造
異色とはなんだ。
くるり
だって、どう造さんて、
衣装は歌舞伎ものだし、
易者らしく「見てしんぜよう」
なんて、重々しいことも言わないし、
全然易者らしくないじゃない。
どう造
派手な衣装の占い師ってのは、
２１世紀を真似たと思えば気にならねえだろう。
話し方だって、
ここではおめえに合わせてお下品なだけで、
江戸では易者らしい口調だ。
だいたい、我々江戸っ子は、
２１世紀の言葉に比べたら、
ずっときれいな言葉遣いをしてるからな。
江戸に戻れば、他のみんなも、
ここにいる時よりはお上品だということだけは、
言っておく。
よし、くるりがそこまで言うなら、
今日は、易者らしく言ってやるか。
くるり殿、ついてまいれ。
くるり
それ、易者口調？
どう造
そもそも易とは、
万物を支配する法則、
陰と陽から成立するものである。
くるり
どう造さん、
やっぱりいつものままでいいよ。
どう造
もう、ついてこれぬのか？
くるり
だから、それは
易者口調じゃないって。
どう造
まあ！
こう言えばああ言うお人ね。
くるり
それも違います。
どう造
おめえがぐだぐだ言うから、
本題が進まねえ。
だから、万物は陰と陽で成り立ってるんだ。
片方しかなかったら、
それは異常だ。
くるり
でも、陰よりは陽のほうが、
感じいいよね。
どう造
いいも悪いも、
どちらも両極端でありながら、
同じものだ。
たとえば、この一文銭。
表が陽で、裏が陰になる。
そして表ある限り、裏は必ずあり、
裏ある限り、表も必ずある。
片方だけで成立することは、ありえない。
そして、どっちであっても、
一文銭であることに変わりはない。
天にも地にも共通する万物の法則、陰陽とは、
そういうものだ。
くるり
じゃあ、どちらを見ているかだけの差なんだ。
どう造
そうだ。
江戸でのわたくしたちが陽だといたしますと、
ここでの俺たちは陰、
まるっきり違うが同じ人物、
ってのと一緒。
くるり
そういうのは、二重人格って言うと思う。
どう造
何か言ったか？
大事なのは、
どっちがいい悪いではなく、
必要な時に必要な方を見ることだ。
陰が多ければ陽、陽が多ければ陰。
そうして、陰陽の釣り合いがとれた状態が、
一番いいんだ。
さっきも言ったように、
易も陰と陽の組み合わせで卦が決まる。
その中で、完全無欠の完成を表わした卦の形は、
陰陽陰陽陰陽と並んだものだ。
これも、釣り合いがとれている。
くるり
どう造さんて、やっぱり一応易者なんだね。
どう造
一応は余分だ。
人生でも、この陰陽をあるべきところに配して、
釣り合いをとれば、
完成した人生になろう。
悩みに出会ったときは、
陽で迎える。
そこを間違えて、
陰で迎えてしまえば、
悩みにとらわれしまう。
また、陰と陽は別物と読み違えれば、
ただひっくり返せばいいだけのことを、
ややこしいことにしてしまう。
陰の裏は陽であることもわからなくなるから、
失敗も恐れてしまう。
だから、釣り合いも保てなくなるんだ。
くるり
陰陽の見方、選択を、
間違えずにきちっとはめれば、
順調に行くわけなんだ。
でも、なんで陰が先にくるんだろうね。
どう造
そこも奥深いところだ。
まあ、易的な見方もあるが、
俺が思うに、
こういうこともあると思う。
たとえば、苦が陰、楽が陽なら、
陰を先に知ってから、陽を知るほうが、
陽を先に知ってから、陰を知るよりも、
確実なものが得られるだろう。
完成の卦とは逆に、
陽陰の順で規則的に並んだ卦は、
未完成を表わすことも、
それを暗示している。
くるり
人生って、生まれ持った卦の陰陽を修正して、
完成の卦に近づけるようなものかもしれないね。
どう造
そのようにも言えるかな。
くるり
でも、生まれ持っていい卦の人と、
悪い卦の人との差は、不公平だよね。
それが運と言ってしまえばそれまでだけど。
どう造
俺は、さほど差はないと思うぞ。
悪い卦を与えられた人間は、
いい卦になるまでは大変だが、
いい卦に至れば、それを保つ力がついているから、
再び悪くする可能性は少なくなる。
だが、最初からいい卦を与えられた人間は、
それを保つ力もないまま、保たなければならないから、
悪くなる可能性のほうが高い。
それも、けっこう危ういもんだ。
くるり
でも、運があれば、
危うくても、無事に保ててしまえるかもしれないもの。
やっぱり恵まれない人生より、
恵まれた人生のほうがいいよ。
どう造
その恵まれた、恵まれないってのは、
陰の受動的考え方だ。
陽にしたい時は、
陽の能動的な考え方にすれば、
恵まれるようにした人生と、恵まれないままにした人生となる。
どちら側が出ているかが運ではなく、
どちら側にするかが運に関係してくるんだ。
くるり
陰と陽が同じものなら、
かえって、あまり陰陽にこだわらないのも手じゃない？
極端な話、こっちが陰で、こっちは陽と決めたのも、
陽に良いものが多くて、陰は悪いものが多いと思ってるのも
人間が勝手に決めたことなんだし。
どちらも同じものであることを知ってるだけでいい。
どう造
それもいいだろう。
こだわりをなくせば、
その裏にあるものも含めて見えるようになる。
悩みも苦労も陰だけど、
陽につながっていることがわかれば、
失敗は成功のもとということが見えるようなもんだ。
くるり
あ、でも、完成の卦の裏が見えたら、
未完成の卦になることに気がついてしまう。
どう造
だからこそ、用心して転ばぬ先の杖とすることができるんだ。
裏を見てないより、よほど心強い。
逆に未完成の卦の裏を見れば、
完成となるのだから、希望へとつながる。
くるり
陰陽って、本当に奥深いね。
どう造
そうだぞ。
活用次第で、いくらでも役にたつ。
夫婦の形だってそうだ。
陰の女が基となって、陽の男を盛り立てれば、
内助の功、女の鏡とほめたたえられる。
これが逆だと、そうはならねえ。
そこを、うちのかかあはわかってねえがな。
くるり
そうかな。
陰である女のおはぎさんが先で、
陽である男のどう造さんが後になって、
それも一応、正しい陰陽の形にはなってるよ。
だから、平和で安泰なんだよ。
どう造
それもそうだな…
って、納得するな、どう造！
（発行マガジンより、本文のみ掲載しております。）
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