あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
幸せになりたい時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第102号
〜 積み重ねないと見えてこない 〜
2008. 7. 3
くるり
みなさん、こんにちは。
今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客様は、
長屋のどう造さんとおはぎさんの子供で、
大家さんのおめでた屋に奉公している
茶さじ郎ちゃんです。
茶さじ郎
こんにちは。
おめでた屋の小僧、茶さじ郎でございます。
くるり
丁寧な言葉遣いに
ますます磨きがかかってきたね。
茶さじ郎
商人にとって、言葉遣いは大切ですから。
くるり
でも、ご隠居さんもおかみさんのおふくさんも、
おなか姉妹も、
商売人のわりには、
さほど丁寧な言葉でないよ。
どう造さんにいたっては、言葉どころか、
見かけも易者らしからぬし。
茶さじ郎
実際の江戸では、そんなことないですよ。
あ、おとっつぁんの格好だけは、
江戸でも浮いてますが。
私達は、ここではなるべく、
２１世紀の人にあわせた、
わかりやすい言葉を遣うようにしてますから、
それで、江戸にいる時ほど丁寧に話していないのでしょう。
くるり
つまりは２１世紀の方が、かなり雑ということね。
茶さじ郎
さらに、話す相手にも合わせてますので、
それで、なお雑に…
あ、また馬鹿正直に言ってしまうところでした。
今のは聞かなかったことに…
くるり
できません。
茶さじ郎
本当に、いつまでたっても、
至らないことばかりで。
くるり
その年で、至ってたら、
人生することなくなってしまいます。
茶さじ郎ちゃんも、
江戸ではそれ以上に丁寧に話しているの？
茶さじ郎
はい、江戸では、
ですます調でも、雑な言い方とされます。
くるり
へえ、じゃあ「ございます」調で？
茶さじ郎
さようでございます。
くるり
恐れ入りました。
茶さじ郎
言葉は、人様に向けるものですから、
言葉遣いが大切な礼儀の一つとされるのは、
もっともなことです。
おめでた屋の主人は、
父親であるご隠居から、
「お客様に丁寧な言葉で話すのは、
買ってくださる人だからではなく、
相手を尊重する心遣いから出るものでなくてはなりません。
それが自然にできるようになって、
初めて店の信用を保てる人間になれるのです。」
と言われてきたそうです。
くるり
確かに、礼儀がなってなければ、
商売の命である信用は、育めないものね。
しかし、商人は常に信用を意識しなくてはならないから、
大変といえば大変でしょ。
茶さじ郎
ちっとも大変なことはありませんよ。
人の道からはずれなければ、
自然に蓄積されていくものです。
だけどくるりさん、
江戸では、商人ばかりでなく、
お客さまご自身の信用も大事なんですよ。
私達のところは、信用で成り立つ掛け商売が主流で、
集金は、盆暮れの２回だけですから。
くるり
それって、商業というより農業みたいだね。
収穫は年２回、みたいな。
しかし、悠長というか、
今じゃとても考えられない呑気な社会だね。
茶さじ郎
江戸はそんなことができるほど、
信用しあえる社会だってことにも、
気がついてくださいよ。
くるり
すばらしい信頼関係！
茶さじ郎
遅いですよ。
くるり
そうなると、
信用されないと売ってもらえないこともあるから、
より自分の信用は大切にするようになるね。
茶さじ郎
ですから、
払えなくても、
ほんのわずかでも払おうとしてくださったり、
わざわざお店にお詫びにみえるお客さまもいらっしゃいます。
そうやって、出来る限りの誠意をみせる人は、
時間はかかっても必ず払ってくださるものです。
くるり
でも、ますます悠長な話だね。
茶さじ郎
そういうお客さまばかりでしたら大変ですが、
自分の信用を大切にする社会では、
２１世紀と違って、
払わないですまそうという人は、
ずっと少ないですよ。
ましてや、払えるのに払わない人なんて、
それこそ信じられません。
くるり
今は、お金さえあれば
信用がなくても困らないから、
自分の信用なんて、
屁とも思わない人が増えたのかもね。
茶さじ郎
くるりさんの口から、
「屁とも思わない」なんて言葉が…
くるり
あらまあ、ごめんあそばせ。
お上品な私から、
そんな言葉が出るとは思いませんでした？
茶さじ郎
いえ、
「出ても、全然違和感ないですね。」
と言おうとしてしまっ…
あ、また馬鹿正直に言ってしまうところだった。
くるり
ほとんど言ってます。
茶さじ郎
まあまあ。
話に戻りましょう。
前におっかさんが、
自分という人間をどう見るか決めるのは、
相手の領分であって、
自分を良く見せようとするのは、
相手の領分に干渉していることだから不自然になる、
って話をしたことがあったと思います。
信用がある人間かどうかということも、
同じことで、
信用は人に見せるものではなく、
人が見るものです。
ですから、信用は日ごろからの積み重ねで、
人から容易に見えるほど、
蓄積されていないといけないのです。
くるり
払えるのに払わないことをしている人が、
信用ある人間に見せようとして払っても、
蓄積されていないから、
すぐには信用されないんだ。
茶さじ郎
そういう方たちは、
信用は人が見るものではなく、
自分が必要になったときに、
人に見せればいいものと思っているのでしょう。
くるり
だけど、実績がないから、
見えない。
茶さじ郎
そうです。
だいたい、信用がないのに、
あるようにごまかして見せようとするのは、
ろくでもないことをする時と、
相場が決まっています。
くるり
信用がなくても、
お金さえあれば、
なんとかなるのが今の世なら、
お金がなくても、
信用さえあれば、
なんとかなるのが江戸だね。
茶さじ郎
商人としての信用も、
お客様としての信用も、
要はその人自身の信用です。
でも、いくら２１世紀が、
信用よりお金が幅をきかす社会でも、
信用がなくて幸せになれるかどうか、
ということは別物ですよ。
くるり
一朝一夕には積めない信用だからこそ、
積める人間になるために、
日々の心がけを大切にして、
言葉遣いにも、気を配っているんだ。
茶さじ郎
ええ、そうです。
でも、くるりさんの場合は、
「屁」という言葉が、
自然に馴染んでしまうくらいの言葉遣いなのに、
信用できない人にはみえません。
それはそれで、すばらしいことですよね。
くるり
屁で信用されても、それはそれで困るのだ。
（発行マガジンより、若干手直しして本文のみ掲載しております。）
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