あっぱれ長屋の江戸っ子たちと現代人くるりのドタバタ人生談義
幸せになりたい時向き編 
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あっぱれ長屋のプラス話 第42号
〜確かなものではないからこそ〜
2005. 2.14
くるり
みなさん、こんにちは。
今日のお江戸あっぱれ長屋からのお客様は、
あっぱれ長屋を持ってる家持大家で、
大店のご隠居で、考えたら庶民じゃないじゃん、
っていう棚ぼた衛門さんです。
ぼた衛門
もっとも家持大家と言っても、
あっぱれ長屋は、かなりおんぼろだから、
店賃はないに等しいし、
おめでた屋も中店くらいだな。
江戸では大家は雇うのが普通だけれど、
そんな金はないから、わしが直接やっているんだし。
くるり
それでも、財産持ってるのは確かです。
人間、引き算でなく、足し算で考えろっていうでしょ。
小金持ちだって、充分幸せだよ。
欲をかいてはいけません。
ぼた衛門
わしは、不服ではなく、ただ真実を言ったまでじゃ。
そもそも、その財産だって、今たまたまあるだけのこと。
この先に何かが起きて、それを手放すこともあるかもしれない。
くるり
２１世紀まで来られるくらいなら、
自分の将来も、見とけばいいじゃないの。
ぼた衛門
人ってのはな、先がどうなるかは決まってないんじゃ。
いくら、先の世に行って、将来なるものを見たところで、
もとの時空に戻って、それが将来のことになったとたん、
不確定なものになってしまうから、見ても意味がない。
だいたい、人は過去と今の記憶しか持てないんだから、
戻ったとたんに忘れちまうよ。
未来を決めるのは、現在の時空にいる、
自分しかないんじゃ。
くるり
よくわからないけど、そういうもんですかね。
ぼた衛門
だから、お店も長屋も、いつ傾いて、
人手にわたることがあるかもしれない。
何がおきるかわからないのが人生だ。
くるり
長屋はもう傾いてるしねえ。
ぼた衛門
いや、そういう傾きのことじゃなくてだな…。
とにかく、今、持ってるものに確かなものは何もない。
ずっと持っていられるかの保証は、ないんじゃよ。
くるり
でもそれでは、くらーい方向に話がいっちゃって、
元気になれる話にならないんですけど。
ぼた衛門
なんで？
だからこそ、それが今あることに感謝できるんじゃないか。
くるり
そっ、そう来たか。
ぼた衛門
人間ってのは、うまくいってるときは、
保証もないのに、それがずーっと続くと思い込んでしまうんだな。
そう思って安心してしまうから、おざなりになってくる。
これは、運の悪いときでも同じだ。
うまくいかない時も、その状態がずーっと続くと思ってしまうから、
やけになって、おざなりになる。
だけど、こっちだって、何もずーっと続くって保証はないぞ。
くるり
そっちは、別に保証してもらわなくてもいいけどね。
ぼた衛門
人生がうまくいってないからって、
やけになったり、暗くなったり、
ひどいのは、自殺するやつもいる。
そうそう、自殺と言えば、
わしが、１９号で自殺について語ったときからも、
相変わらず、減ってないようだね。
くるり
自殺する人にも、事情があるだろうけど、
一番腹がたつのは、仲間を募って自殺する人だよ。
そうしなきゃ死ねないんなら、死ぬなよ！
人生、どこまでなめたら、気がすむんじゃい！
ぼた衛門
まあまあ、落ち着け。
１人で死ぬ勇気がねえってのは、
もちろん、まだ生きたいという思いがあるからだ。
その思いに無理やり封印しようとするから、
勢いで死ななきゃならねえんだな。
死ぬことに対して、そんな前向きな勇気が出せるんなら、
生きたいという思いに注げばいいと思うんじゃが、
そっちには、もう進む気力がない。
くるり
生きる道は、山が立ちはだかってて大変そうだけど、
死ぬ道のほうは、楽そうだっていう、
今見えるところの状態しか見てないからだよ。
山があっても、永久に山ばかり続くということはないんだし、
楽そうな道だと思っても、
その先には深い落とし穴が待ち受けているかもしれないんだから、
目先で選んだら、だめだよね。
ぼた衛門
そう、人生ってのは変わるもん、
今の状態だけで判断したらだめ。
時代も人の意識も変わっていくのは、
それが、変わる人生の集合体だからじゃ。
だからこそ、いいことも悪いことも、変化する。
くるり
でも、悪い時はともかくも、好調なときは、
これも続かないかもなんて考えたら、
嬉しくないなあ。
ぼた衛門
だから、さっきも言ったろう。
今、それがあることに感謝すれば、
それを大切にできる。
すると、自らの姿勢も変わる。
そうすれば、同じ変わるものでも、
いい方へいい方へと変化していく。
よしんば、悪い方へ行ったとしても、軽くすむ。
ところが、いいときほど、これを忘れがちで、
あるのが当然という気になってしまう。
逆に、悪いときには、大切にしなくていいもんを
大切にしちまうんだな。
くるり
それはどういうこと？
ぼた衛門
いつも悪い状態に焦点をあてて、
朝から晩までご大層に「悪いこと」を抱え奉ってるから、
ずっと頭から離れない。
ますます、いいように振り回されて思いつめる。
くるり
そうか、悪い時こそいい加減にして、あまり思いつめない。
逆にいい時は、そこにしっかり焦点をあてて、
じっくりどっぷりその思いに漬かって、
常に感謝を忘れない。
ぼた衛門
感謝のほうは悪い時にも、忘れてはいけないぞ。
今ある自分のお金、物、周りの人、すべてに感謝する。
それらは、今は、縁あるものとして存在してくれているが、
いつまでもいてくれるものかはわからない。
だからこそ、感謝して大切にする。
くるり
お金なんか、すぐいなくなっちゃうもんねえ。
でも、お金だけでなく、それを入れてるお財布にも感謝、
そして、お財布をくれた人にも感謝して大切にする。
ぼた衛門
おまえ、いつも財布はもらってるのか。
人は、先の状態は見えないから、頭ではわかっていても、
つい、今の状況がすべてに見えてしまうのは、致し方ない。
でも、それが確かなものではないことを知っていることで、
いい時も悪い時も、前向きになれるんだ。
くるり
確かなものは過去と今だけ。
ぼた衛門
過去は、いくら確かなことでも、
もう動かすことも、触れることもできない。
確かな手ごたえがあるのは、
「今」という一瞬一瞬しかないんじゃ。
だからこそ、過去や未来にとらわれずに、
唯一確かな「今」を大切にする。
くるり
でもさ…。
ぼた衛門
なんじゃ？
くるり
ご隠居さんたちって、その「今」も確かなものじゃないよ。
ぼた衛門
わ！
（発行マガジンより、若干手直しして本文のみ掲載しております。）
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