おまけの
ある日のあっぱれ日誌 
     あっぱれ長屋にいらっしゃい」の江戸っ子達の一こま


ある日その壱 自分の不幸は蜜の味(ある日のどう造の辻占い屋)
ある日その弐 浪人天さんの母来たる(ある日の長屋)
ある日その参 ♪おとめのいかり(ある日のおなか茶屋)
ある日その四 茶さじ郎の薮入り(ある日の長屋)
ある日その五 おとくの花嫁紹介? (ある日のおなか茶屋)
ある日その六 易より山勘(ある日の長屋)
ある日その七 雨降りの日は酒盛りの日(ある日の長屋)




ある日その参

おなか茶屋でのある日2♪おとめのいかり  

  ある日の住人  なか たて太郎 はぎ とめ  



なか
いらっしゃいま…、なんだ、たて太郎じゃないか。
どうしたの、真剣な顔して。
お前のまじめな顔って初めて見たね。
いつも一本釘抜けたような顔してるもんね。

たて太郎 
バカ言うない。
おいらはいつでもきりっと真剣な顔してらー。

なか   
なんか悩み事かい。
よし、団子おごってやるから、話してみなよ。

たて太郎
ところで、おなかさん、今日はおとめはいないかい?

なか
あー、ちょっと使いに行ってもらってるよ。
あれー、そうか、お前とめに惚れたかい?
そうか、無理もない。
あの子も姉の私と同じで美人だからね。

たて太郎
よせやい、何であんなおちゃっぴーに惚れるかよ。
あっ、団子どこへ持ってくんだよ。

なか
女を見る目がない奴に食わせる団子はないよ。

たて太郎
ちがう、ちがう、おいら、どうも美人は苦手なんだよ。

なか
そうかい、その割にはついこの間まで、
小町娘のおはるに熱あげてたじゃないか。

たて太郎
だから、おいらはやっぱり美人が苦手だなーって思って、やめたんだよ。

なか
ふられたってべろべろに酔っ払って帰ってきて、
おらあもう死ぬんだって、
たらいに飛び込もうとしていたの誰だったかな?

たて太郎 
おいらは過去は振り返らない男なんで忘れちまったぜ。
過去を振り返れば、泣かせた女が数知れず…。
あっ、それそれ、おなかさん。
おとめが熱上げてるため吉のことなんだけど、
どうも、おはるちゃんにも
ちょっかい出してるらしいんだよ。

なか
なんだって?それはどういうことだい?

たて太郎 
団子。

なか
嫌なやつだね。

たて太郎 
はい、ご馳走さん。
いやね、夕べ、おいら一杯やってほろ酔い機嫌で歩いていたのよ。
それで今やってる普請場のとこ通ったら、なんか人の気配がするんだ。
普請場に火でもつけようとしているんじゃなかろうか、
この野郎とっ捕まえてやるぞ!ってんで、
気づかれないように見たら
ため吉とおはるちゃんが、
こう肩なんか組んで楽しそうに話してるのよ。
おかげで酔いが一気に醒めちまった。
ちくしょー、酒代返せ。

なか
若い娘が、暗くなってから家を抜け出て逢引きとは、
おはるちゃんもしたたかだね。
たて、おまえふられて良かったかもしんないよ。

たて太郎 
そう言えばおはるちゃんはおいらに、
好きな人がいるからって言ってたぜ。
おはるちゃんのことはおいらは、
さっぱりあきらめてるからなんともねえ。
だけど、問題はため吉よ。
おとめと二股かけていやがる。
このこと、おとめに言ったほうがいいのかどうなのか。

なか
でも、とめはそのため吉とやらに夢中だよ。
あたしが言ったら、ひがんでるんでしょなんて言われかねない。
たて太郎から言ってくれないかい?

たて太郎
滅相もねえ。
あんた、自分がふられた腹いせにそんなこと言ってるんでしょ!って
言われるのが席の山だ。

なか
うーん、困ったね。
大体、そのため吉ってあたしは会ったことないんだけど、何者なんだい?
とめに取り持ったのあんただろ?

たて太郎
いや、実はおいらも良く知らない。

なか
お前、そんなどこの馬の骨かわからない奴を、
とめに取り持ったのかい!?

たて太郎
だって、おとめが店番しているときに、
あいつと無駄口たたいて団子食ってたらよ、
隣にいたそのため吉ってやつが、こっそり、あの子はおめえのなにかい?って言うから、冗談じゃねえ!!!って言ったんだよ。

なか
そんなに力こめなくたっていいだろ。

たて太郎
そしたら、あいつがよ、実は一目惚れしたって言うんだ。
世の中には物好きな奴もいるもんだとは思ったけどよ、
おとめがこんないい男から惚れられることは、もうないだろうって、
おいらは親切心で取り持ってやったんじゃないの。

なか
ようするにそいつは、女だったら誰でもいいんじゃないかい。
しかし、とめにどう言ったらいいかね。
そうだ!こういう時こそおはぎさんだ。
おはぎさんなら、何か知ってるかもしれない。

はぎ
何か用かい?

たて太郎
わっ!いきなり衝立てから顔だすな!

はぎ
だって、あたしが来たのも気がつかないで、
二人で衝立ての陰で顔寄せ合ってるだろ。
つい何してるんだろって興味が湧いちゃうじゃないの。

なか
変な想像しないでよ。こんなのと。

たて太郎
こんなの?

はぎ
悪いけど、みんな聞いちゃったよ。
ため吉ってのは、ヨイコラショ坂の途中に最近越して来た女のツバメよ。

たて太郎
さすがだね。

はぎ
もちろんさ。とくにいい男のことならね。
って言うのは冗談だけど、
この間、おとめちゃんと話しているのを見てさ、なんかピンときたんだよ。
こいつは危ない!ってね。こう見えても私は男を見る目は肥えてるんだから。

たて太郎
それで、亭主があのどう造かよ。

はぎ
あれは、魔がさしただけだよ。
それで、こっそり後をつけてみたのさ。

たて太郎
おはぎさんも暇だなー。

はぎ
おとめちゃんのためじゃないか。
そして、入っていったのが、ヨイコラショ坂の家さ。
奴が格子に手をかけるより先に戸が開いてさ、中から女が顔出した。
年のころはおなかちゃんぐらいかね。
それが女のあたしから見ても惚れ惚れするようないい女でさ。
その女がこう奴の手をとって
「どこ行ってたのさ。また他の女にちょっかい出してきたんじゃないだろうね」って、
こう流し目くれて…。

たて太郎
チョッ、チョッ、ちょっと、おはぎの流し目はやめてくれー。

はぎ
なんだよ、失礼な奴だね。

たて太郎
だけどよ、そうなると二股どころか三股かい。
いや、もしかしたらもっと出てくるかもしんねえ。
どういうつもりでいやがるんだろ。
よし、おいらにも責任はあろうな。
一度、その女の家に乗り込んで奴に聞いてみるか。

なか
とか何とか言って、本当はそのいい女が気になってるんだろ?

たて太郎
ばれたか。

なか
あたしが行くよ。

たて太郎
オメエは男が気になるんだろ。

なか
ばれたか。

はぎ
いずれにしても、ろくでもない奴だね。

たて太郎
それで、何かいい方法がないか相談してたんだよ。

とめ
ただいま!

たて太郎
ヒェッ、オッ、おとめちゃんだね、お帰り。

とめ
なにびっくりしてるのさ。
ボケてこの顔忘れちまったかい、すっとこどっこい!

たて太郎
なんかえらく機嫌が悪いじゃねえか。

とめ
聞いてよ!
ため吉の奴ったら、ヨイコラショ坂で女と暮らしてたのよ!
くやしー!

たて太郎
それだけでないぞ、おはるちゃんともつきあ…、
えっ、なんで知ってるんだい?

とめ
えっ、おはるちゃんとも付き合ってんの?もう、許せない!
たて太郎、まさか、おはるちゃんから引き離そうとして、
あたしにため吉紹介したんじゃないだろうね。

たて太郎
そいつは誤解だ。
大体、おはるちゃんとおめえを比べて、
おはるちゃんの方を捨てる男がいるわけねえだろ。
アワワッ、ワーッ、まず、落ち着け。
 
なか
ほら、水飲んで落ち着きな。

とめ
帰りにね、手鏡買ってるため吉をみかけたのよ。
声かけようと思ったけど、
あたしの為に買ってくれているんだわ、気がつかないふりしようって。
ところが、こっちへ向かわないで、ヨイコラショ坂を登っていく。
気になってつけていったら、坂の途中の家に入ってってさ、
奴が格子に手をかけるより先に戸が開いて…、

なか
中からあたしみたいないい女が顔出して、ため吉の手をとって
「どこ行ってたのさ。また他の女にちょっかい出してきたんじゃないだろうね」って、
こう流し目くれたんだろう。

とめ
そんな、目にごみが入ったみたいな流し目じゃなかったけど…
どうしてわかるの?

なか
いちいち、訂正しなくてよい。おはぎさんも同じ場面見たんだってさ。

とめ
えっ、おはぎさんもため吉に気があったの?

はぎ
どっ、どういう発想する子だい。

たて太郎
しかし、なんだな。
その女、ため吉が出かけている時は、
いつも格子の中ッ側に張り付いて、
ため吉を待って中から覗いているんだろうか。
おー、こわっ。

とめ
とにかく、馬鹿にするのもいい加減にしろってのよ!

はぎ
それじゃ、もうため吉と会うのはやめるのかい?

とめ
あたりきしゃりき、こんこんちき。
さあ、仕事、仕事!水汲んでくるわ。

はぎ
大丈夫かね。今はカッカきてるけど、あとで落ち込まなきゃいいけどねー。

なか
失恋ひとつまともにできない人間は碌な人間になんないよ。
その時はつらいけどさ、失恋して傷つくたびに、いい女になんのよ。
わたしがいい見本。

たて太郎
それじゃ、まだまだ足りねえな。

なか
お黙り!ともかく、あたしらはあれこれ考える必要が無くなったわけだ。

たて太郎
あとはおとめが自分で立ち直るのを見守ってやるか。
なにしろ、失恋慣れした人間は山ほどいるからな。

はぎ
悪いけど、あたしは違うよ。

たて太郎
あったりめえだろ、どう造にふられるようじゃ、おしまいだぜ。
あれ、おとめにばれたってことは、
おはるちゃんが知るのも時間の問題。
となると、おいらにもまだ望みがあるってことだ。
わーい、おはぎさんよー、
ため吉がとんだ女ったらしだって、早く言いふらしてくれよ。
前言取り消すからよ。

はぎ
あれ、お前、男らしくさっぱりとあきらめたんだろ。
未練たらしく、またちょっかい出すのかい?

たて太郎
それもカッコわりいな。
そうか、傷心のおはるちゃんちゃんが、
 「そういえば、たて太郎さんという優しい人がいたわね。
私ったら、なんて馬鹿だったんだろう」
って思うように持っていけばいいんだな。
おーし、作戦、作戦!じゃな!

はぎ
まったく。

なか
懲りない奴だね。まあせいぜい頑張っとくれー。


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